45歳でマンションを購入した独身女性 完済は80歳「老後資金を確保できるか不安」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳会社員の女性。73歳の母との同居を視野に入れ、34年ローンで新築マンションを購入した相談者。ローンを返済しつつ老後資金を確保できるか不安だといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。


初めまして。独身(女性)、45歳です。

実家の老朽化、自分の老後もあり、数年後に母親と同居を視野に、街なかの新築マンションを契約しました(現在建設中、46歳の年からローン融資実行)。独身という事もあり、これからのローンの資金繰りと老後資金を確保できるのか不安で、どの様なやりくりをしていけば良いかアドバイスをいただきたいです。よろしくお願い致します。

【相談者プロフィール】

・女性、45歳、会社員

・独身、母(73歳)と同居、現時点で介護等はなし

・お住まい:鹿児島県(親の家で同居)

・毎月の世帯の手取り金額:21万

・年間の世帯の手取りボーナス額:80万円(40万×2回)

【毎月の支出の内訳】

・住居費:2万円→今後7万6,000円(ローン返済6万円+管理・修繕・駐車場代1万6,000円)

・食費:2万円

・水道光熱費:1万円

・保険料:医療、変額年金保険5万4,000円(うち4万6,000円が年金保険)

・通信費:1万円

・車両費:ガソリン代 5,000円

・お小遣い:1万5,000円

・その他:自動車税4万円、車検10万円、自動車保険2万5,000円 ※普通車5年目10年単位で乗り換えたい

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:記載なし

・ボーナスからの年間貯蓄額:記載なし

・投資:自社株購入2万、ボーナス時6万×2回

・現在の貯金総額:貯蓄額530万円

・現在の投資総額:自社株850万、変額年金保険(解約返戻金)330万

・現在の負債総額:住宅ローン借入額2,600万(物件価格2,808万円)、金利0.3%(現仮審査時点、変動金利)、返済期間34年

・老後資金:基礎年金78万/年、厚生年金102万/年、退職金360万円

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。今回は、独身女性の老後資金確保のご相談です。46歳で80歳までの34年間の住宅ローンを組み、リタイア後も住宅ローンの返済をしながら、安心して生活できるかどうか不安を抱えてらっしゃいます。

リタイアまでに老後資金としてどれくらい準備が必要で、どのように住宅ローンの返済をしていけば良いのかについて考えていきましょう。

相談者に必要な老後資金は1400万円

まずは、ご相談者の老後に向けて準備すべき金額について整理していきましょう。現在の生活水準をもとに老後資金をイメージしてみます。一般的に老後資金の目安額を導く流れは以下のようになります。

1)リタイア後の年金等の収入から、住宅費や食費・水光熱費などの生活費を差し引くと、月々の収入と支出との差額が出ます。

2)月の差額の1年分に、旅行や年払い保険料や家電の買い替え費用など年間で想定される支出を予備費として計上すると、年間の差額が出ます。

3)年間の差額に65歳から何歳まで生きるのかを掛け合わせて、さらにリフォームや介護、葬儀費用などを特別支出として加えれば、老後資金の目安が算出できます。

ご相談者のケースで、住宅ローン返済が終わる80歳まで、今の生活を基準に、年間予備費を30万円、特別支出を800万円と想定すると、

1)「月の収入」―「月の支出」=「月の差額」
→15万円-15.8万円=0.8万円 ※月の支出から変額個人年金を除いたおおよその金額
2)「月の差額」×12カ月+「年間予備費」=「年間の差額」
→0.8万円×12カ月+30万円=39.6万円
3)「年間の差額」×◯◯年分+「特別支出」=「老後資金の目安額」
→39.6万円×15年分+800万円=1,394万円

この計算から、ご相談者が65歳にリタイアし、80歳まで今の生活を維持するためには、1,400万円程度の資金準備が必要ということがわかりました。

準備できる金額は3000万円

ご相談者の場合、住宅ローンの返済が終了すると返済額である約6万円が無くなるため、年金収入のみで生活することが可能になりそうです。ただ、現在お母様とお2人の生活での支出額なので、もしお母様に生活費の一部を賄ってもらっている場合はその分を差し引く必要があります。

既にご相談者は、老後に向けて準備もされています。毎月の貯蓄状況について不明な部分もありますが、最低限、自社株と変額個人年金は積み立てられています。自社株については、年間36万円購入しているので、リタイアまでの残り20年間継続すると想定すると、850万円+36万円×20年間=1,570万円となる予定です。

変額個人年金については、現在の解約返戻金額しか分からないので、現在の解約返戻金の330万円+月々4.6万円×12カ月×20年間(65歳まで)=約1,430万円です。

どちらも運用を考慮せず合算すると、3,000万円程度の準備できることになります。

もし、今の生活が続き、継続して貯蓄することができるのであれば、住宅ローンを支払いながら、老後の生活をしていくことについては、大きな心配をする必要は無さそうです。

3つの注意点

注意点としては、3つです。まず、今の生活がお母様とお二人の生活なので、ゆくゆくは一人で生活すると考えた時に、実際に生活費としてどれくらい必要なのかは整理しておく必要があります。もし現状お母様が負担されている部分があり、今よりも生活費が上がる可能性があるのであれば、それを考慮しなければいけません。また、ご自身の介護だけでなく、今後のお母様の介護で費用負担が必要となる可能性もあります。今のうちにお母様の資産状況についても確認しておきましょう。

次に、老後の生活が問題なく準備できるのは、あくまで65歳まで健康で働いて貯蓄が継続できた場合ですので、途中で病気等で収入が得られなくなる、もしくは減少するなどに備えておく必要もあります。現在加入されている保険が適正なのかをチェックしておきましょう。

最後に、現在の貯蓄方法です。ご相談者は、変額個人年金と自社株と、将来変動する可能性がある方法で準備をされています。特に、自社株の比率が高いのは気になるところです。自社株は、奨励金が出るなどのメリットがありますが、一方で、会社への依存度が高まるため、業績が好調であれば良いですが、もし企業の業績が悪化すると、給与も金融資産も双方とも下がってしまう可能性があります。リスクを分散するという観点からは、自社株比率が高すぎるのは避けた方が良いかもしれません。

将来に対して不安を抱えるのは、見通しが見えないことから来ると考えられます。今回のように、一定の仮定のもとシミュレーションをするだけで、将来の生活の見通しができ、安心に繋がります。ただ、シミュレーションするだけでは、何も変わりません。対策が必要であれば、ぜひできることから行動に移して、理想の生活に近づきましょう。

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