「豪を選手権に連れていく」負傷離脱の友と勝ち取った27連覇 サッカー青森山田高

試合開始前、けがで欠場した関口㉒らのユニホームを掲げて集合写真に納まる青森山田の選手たち=5日、青森市のカクヒログループアスレチックスタジアム
「最高の仲間とともに選手権優勝して高校サッカーを終えたい」と話した関口(手前)=10月、青森山田高校グラウンド

 大けがをした友のために-。5日、青森市で行われた全国高校サッカー選手権県大会決勝で27連覇を果たした青森山田。「豪を選手権に連れて行く」。選手たちは左膝に重傷を負って入院中のDF関口豪(3年)への思いを胸に全国切符をつかみとった。

 「パキパキという音がした」。9月の練習中。関口は左足を踏み出した瞬間、膝がずれた感覚がした。耳にしたことがない音に驚き、痛みで立ち上がれなかった。医師の診断は左膝前十字靱帯(じんたい)断裂。手術すれば復帰まで半年以上を要する。完治を早めるためにすぐに手術するか、選手権出場を狙える保存療法か。1カ月ほど迷った末、将来を見据えてメスを入れる決断をした。

 栃木県出身。小学5年時に同校の選手権初優勝を見て青森山田中に入学した。高校では181センチの長身を武器にセンターバックとして今季、頭角を現した。同校セカンドチームでの活躍が認められ、トップチーム入りを果たすと、高円宮杯プレミアリーグで8試合に途中出場。「憧れの舞台」だった選手権出場に近づく中での大けがだった。

 それでも、「万全でない状態でプレーするよりサポートに徹した方がチームに貢献できる。青森山田ファミリーという最高の仲間と全国優勝する」と目標を切り替え、練習では声を張り上げてきた。

 関口と中学時代から6年間ともにプレーし、寮で同部屋のDF小林拓斗(3年)は負傷後の関口と間近に接してきた。靴下を履かせたりベッドから起き上がるのを手助けしたり。練習では見せないつらい表情も目にした。今月初めには県外で手術を終えた関口とビデオ通話をし、足の感覚がないと打ち明けられたという。そのときにもらったのは「頼んだぞ」という激励の言葉。「豪のつらい表情は絶対忘れちゃいけない。気合が入った」。小林とともに通話したMF福島健太(同)も「豪の代わりに戦う。プレーできている自分たちが、気の抜けたプレーはできない」と気持ちを引き締めた。

 5日の決勝戦。「けが人の分まで全員で戦おう」。ロッカールームで声をかけ合った選手たち。昨年は苦戦した野辺地西を相手に、9点を奪い圧倒的な力を見せつけた。

 右サイドバックとしてフル出場した小林は「豪を心配させるような試合内容にしたくなかった。リハビリを頑張って、一緒に全国制覇をしようと声をかけたい」。ピッチに立てない仲間とともに2大会ぶりの日本一へ。青森山田が第一歩を踏み出した。

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