茶に付加価値を与える 茶農家の販路開拓を支える男性の挑戦

和束茶の魅力について語る田中さん(和束町白栖)

 「和束町の、勝手に広報宣伝営業本部」。名刺にはそんなキャッチコピーを記している。田中昇太郎さん(40)は「京都府和束町は地域が活性化しているまち。それを世の中に伝えたい」と力を込める。

 2022年7月に合同会社「スチームパンク」を起業し、代表を務める。茶農家の販路開拓やマーケティングなどを担うほか、観光や企業誘致のPR事業を町から委託され、紹介動画の作成や共用オフィスの運営にも取り組む。

 東京都出身。京都産業大を卒業後、大手精密機器メーカーの子会社で法人向けの営業などを担当した。

 社会人になってから、茶に興味を持った。営業の合間にカフェに立ち寄る中で、茶のおいしさを知った。生産地にも惹(ひ)かれ、和束町に15年ごろ訪れ、その後も来訪を重ねた。

 初めて茶畑を見た時のことを「異世界に迷い込んだかと思った」と振り返る。町の直売所ではブレンドした茶葉でなく、農家が生産した各自の茶葉を扱っていることにも魅力を感じた。

 転職したきっかけは、新型コロナウイルス禍。テレワークが増え、将来を考える時間が増えた。「人生は一度しかない。世の中がどうなるかわからなかった中で、茶に携わる仕事がしたいと思うようになった」

 22年3月、町に移住。起業後、町内で広報のアドバイスなどを始めると、茶農家からパンフレットやウェブサイトのデザインの相談などが相次いだ。80代の茶農家を紹介する動画を作ってユーチューブで公開すると、新たな客層への商品販売につながった。

 茶の流通価格の低下が続く中、「茶に付加価値を与え、魅力を伝えることで、値下がりに歯止めをかけたい」と考える。「死ぬまで和束茶を飲み続けたい。それが仕事の原動力です」。同町湯船。

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