“あす地震が起きるかも知れない”1回目は大混乱…南海トラフ地震臨時情報に7割が誤認【わたしの防災】

「南海トラフ地震臨時情報巨大地震警戒」。これは、南海トラフ地震が起きる可能性が普段と比べて、高まったと判断された場合に発表される情報です。

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この情報の的中率は、国の想定では、「およそ7%」とされていますが、7割を超える人がもっと高い確率で巨大地震が起きると誤った認識をしていることが専門家の調査で明らかになりました。

<関西大学 林能成教授>
「いまのようなやり方をしていると情報の認知度は高まっていっても、情報への正しい理解は得られにくいという方向にあると感じられます」

11月2日、横浜市で開かれた「日本地震学会」。関西大学と産業技術総合研究所の研究チームは、「南海トラフ地震臨時情報」の意味が正しく理解されているのか、全国3200人にアンケート調査を行い、その結果を発表しました。

「巨大地震警戒」が発表された場合、1週間以内に発生する確率はどの程度だと思いますか?という質問に対し、「100%近い」と答えた人が全国で14.3%、静岡で16%、「80%」または「50%」の確率だと答えた人が、それぞれ3割ほどいました。

正解は「7%」ほどの確率。7割を超える人が高い確率で巨大地震が起きると誤って認識していたのです。

<関西大学 林能成教授>
「地震は怖いというイメージが非常に強くありますから基本的には、空振りのことを考えずに全力投球しがちなんです。だけども、この情報に関しては、もともと確率が高くない情報だけれども出さないよりはましだから出そうというところがある」

<岩崎大輔記者>
「静岡市役所清水庁舎です。きょうはこちらで、新しくなった津波ハザードマップの活用方法や南海トラフ地震臨時情報を理解してもらうための説明会が行われます」

<清水区の住民>
Q.南海トラフ地震臨時情報をご存じですか?
「あまり周知はされていないけれど、あることは知っている」
「東海地震だって起きる、起きると言って、それ(予知の情報)がなくなった訳だから、現実的にはどうなのかな」

説明会に参加したのは、自治会で防災に関わる人たちが中心で臨時情報の意味を理解している人が多くいました。

しかし、的中率が「7%」という「不確実性のある情報」をどう活用するのかは悩ましいといいいます。

臨時情報「巨大地震警戒」の場合、津波の避難困難区域に住む人や避難に手助けが必要な人など、地震が起きてから行動したのでは明らかに間に合わない人は、事前に避難します。

それ以外のほとんどの人に避難の必要はなく、やるべきことは普段からの地震への備えを再確認することです。

例えば、非常持ち出し品の確認、家具の固定の確認、家族の話し合いなどです。しかし、関西大学などの調査では、こうした推奨される行動をとる人は、最大6割程度にとどまるということです。

<関西大学 林能成教授>
「家族の話し合いとか、非常持ち出し品の確認とか、家具の固定確認、この情報の実力に見合った対応行動が確率が高い時でも高くない。さらには確率が例えばこの情報の実態に合った10%とか1%といったところではグンと下がってしまうので、高いところに上げていくことが重要なのかなと思います」

2019年に運用が開始された「南海トラフ地震臨時情報」。導入から4年が経ちましたが、これまで1度も発表されたことはありません。このままの状態で初めて臨時情報が発表されたら、世の中は少なからず混乱することが予想されます。

<関西大学 林能成教授>
「1回目は非常に混乱してみんなが過剰に捉えて、“あす地震が起きるかも知れない”というようなことをどんどんどんどん言う人が出てきて、それを鎮めることに気象庁も内閣府もものすごいエネルギーを使わなきゃ行けない可能性がある」

“空振り”が多い情報をどう活用するのか。理解を広めなければなりません。

静岡県は他の都道府県と比べて防災訓練への参加率が高いそうです。そうした訓練の機会に臨時情報の仕組みを丁寧に説明すれば、正しい認識が広まるのではないかということです。

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