矢板高、役目終えた繁殖和牛を再肥育 地元業者がハンバーグなどに加工 「良い肉安定して出せるように」

山久で販売されているハンバーグ「矢高放牧和牛」と生徒が作ったPR用のチラシ

 【矢板】役目を終えた繁殖和牛に付加価値を付けて赤身肉の商品開発につなげようと、矢板高農業経営科が校内の放牧場で育てた後の再肥育の研究に取り組んでいる。3年目の本年度、1頭が良質な牛に仕上がった。同校に協力する地元業者が購入しハンバーグなどに加工、10月下旬販売を始め消費者に好評という。持続可能な開発目標(SDGs)達成や地産地消にもつながるとして注目される。

 同科は和牛の肉質を上げる技術向上を図っており、生徒たちが育てた牛が1月、「第6回和牛甲子園」枝肉評価部門で最優秀賞に輝くなど高く評価されている。一方、育てた牛の最高(A5)ランクの食肉が流通されても高価なため、これまで生徒の口に入る機会はほとんどなかった。そこで「広く市民に購入してもらいたい」と10年ほどで引退する繁殖牛に着目した。

 和牛は主に輸入飼料で育てるため環境負荷の影響も課題だったが、放牧場で牧草を食べ続けている繁殖牛なら課題をクリアできる。赤身で硬い肉質は、牛舎に戻し半年以上再肥育する方法を2021年度に取り入れたことで克服。飼養管理のノウハウを積み、9月に出荷した1頭はA3ランクを獲得した。

 同校からこの牛の購入を依頼された食肉加工卸、山久(末広町)はロース、ヒレは生肉、モモ、バラなどはハンバーグに加工し「矢高放牧和牛」の名称で販売。生肉はすぐ売り切れ、800個製造したハンバーグ(560円)も売れ行き好調という。

 綱川雅之(つなかわまさゆき)社長(56)は「肉は思った以上に良かった。動物愛護の点からも関心がある。まずは地元の人に食べてほしい。今後、いろいろなものに商品化できれば」と前向きに語る。

 同科の嵯峨俊介(さがしゅんすけ)教諭(42)は「協力はありがたい。放牧牛による商品開発は畜産を志す生徒にとって選択の幅が広がる。まだまだ手探りだが、少しでも良い肉を安定して出せるようにしていきたい」と話す。

広大な放牧場で生徒たちの世話を受ける和牛たち

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