【セルフ・コンパッション】自分を追い込まないための、3つのエクササイズ

タイムラインを流れるキラキラした投稿を見て、つい自分の日常と比較してしまう。

自分よりも大きな仕事を成功させている同僚を見て、心がざわつく。

日常生活において「自信が欲しいな」と感じる場面は多いかもしれません。

しかし、自信はそう簡単に手に入るものではないですし、中には「自信を持とう」と頑張ること自体が辛くなってしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。

そこでおすすめしたいのが、「自信を持とう」と頑張ることを思い切ってやめること。

矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、僕はこの習慣をはじめてから、かえって以前よりも自信や自己肯定感の欠落について悩むことが減ったと感じています。

自信を持つことの代わりに心がけているのは、自分に優しくすること。これは「セルフ・コンパッション」とも言われています。

今回は、そんなセルフ・コンパッションと、セルフ・コンパッションを味方につけるための具体的なコツをご紹介します。

自信や自己肯定感について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

「セルフ・コンパッション」って知ってる?

教育心理学者のクリスティン・ネフ氏が提唱する「セルフ・コンパッション」とは、「他者を思いやる気持ちと同じように、自分にも思いやりを持とう」という考え方のこと。

はじめは、僕も「自分に優しくするって、甘やかすってことにならない?そんなことで自己肯定感が上がるの?」と困惑しました。

しかし、セルフ・コンパッションについて学んでいくうちに「確かに自信や自己肯定感の問題解決に必要なのは『優しさ』かもしれない」と腑に落ちたんです。

自信や自己肯定感を高めようと躍起になっていると、ネガティブに考える自分も、自信がない自分も、周囲と比べてへこんでしまう自分もいて、「それじゃダメだ」と否定してしまう。

それでは、自分で自分を八方塞がりにしているようなもの。

本当に必要だったのは「自信や自己肯定感がない自分にも価値がある」と優しくしてあげることだったんです。

自分を追い込まないための、3つの物差し

クリスティン・ネフ氏によると、セルフ・コンパッションは3つの要素から構成されているそう。

セルフ・コンパッションの要素1:優しい態度

セルフ・コンパッションの1つ目の要素は「優しさ」です。

自己批判が強い人は、「無能だな」「なんでそんなこともできないの?」など、他人には言話ないような強い言葉で自分のことを責めてしまいがち。

大切な友人や家族が困っているときにかけてあげたい言葉を、自分自身にもかけるようにしましょう。

「そう言われても...」

そんな声が聞こえてきそうです。そこでおすすめなのが、自分自身に4つの質問を投げかけてみてみること。

・自分はなにを見聞きしているのか

・自分はどのようなことを感じているのか

・自分は今なにを必要としているのか

・自分自身や、他者に対する要求はなにか

この4つの質問が、冷静に自分を客観視して優しい言葉をかけるための力添えをしてくれます。

セルフ・コンパッションの要素2:共通の人間性を理解する

セルフ・コンパッションの2つ目の要素は「共通の人間性」です。

ここでいう「共通性」とは、

・人間は誰もが失敗をするものである

・人間は誰もが不完全な存在である

という人類共通の事実。当たり前なことなのに、つい忘れてしまいがちですよね。

自信がない人は、自分の短所やできないことに過度に注目してしまう傾向があります。しかし誰でも失敗することは必ずありますし、すべてにおいて完璧な人はいません。

「自分はなんて能力がない人間なんだ」と自分を過度に責めるよりも、「自分も他のみんなと同じように不完全なんだ」と言葉を選び直してみるのも良さそうですね。

セルフ・コンパッションの要素3:ありのままを受け入れる

セルフ・コンパッションの3つ目の要素は、俯瞰した目線でありのままの現実を受け入れることです。

私たちは、ありのままの感情や状況を受け入れることがすごく苦手。不安なことがあっても、蓋をして気を紛らわせようとしたり、逆に考えすぎて頭の中が不安だらけになってしまったり...。すぐに視野が狭まり、考えも偏ってしまいます。

強烈な感情や思考に心を囚われそうになったら、

・今、五感で感じていること

・今、考えていること

・今、抱いている感情

について、ひとつひとつ実況中継をするように確認するのがおすすめ。

「胃がムカムカして落ち着かないな」

「将来のお金のことについて考えているな」

「不安や焦りを抱いているな」

このように自分自身を客観的に観察することで、ありのままの状況を見つめられるようになります。

自分に優しくするための、3つのエクササイズ

2000年代から研究が進むセルフ・コンパッション。

今回はその中から、生活の中で手軽に取り入れられる3つのエクササイズをご紹介します。

セルフ・コンパッション向上におすすめのエクササイズ1. セルフ・コンパッション・ジャーナル

ひとつめは、セルフ・コンパッションの観点から日記を書く方法です。その日あった嫌なこと、自分を責めてしまったことをテーマに書きます。

まずは、その日起こったネガティブな出来事について、なるべく客観的に書き出します。次に「誰もがそのような辛さを経験する」ことを意識しつつ、ネガティブなことが起こった原因を俯瞰して列挙してみましょう。

そして最後に、自分に対して優しく思いやりのあるコメントを書きます。

例:「レストランで店員さんに腹を立ててしまった。料理が遅かったのもあるけど、お店に着くまでの人混みもストレスだったし、冷静に振り返ってみれば、たまたまバイトがひとり休みだったなんてこともあったのかもしれない。しかし、イライラしてしまうことは誰にでもあるから落ち込みすぎなくても大丈夫。またあのお店に行ったときは、笑顔でお礼を言いたい」

セルフ・コンパッション向上におすすめのエクササイズ2. 思いやりトレーニング

「なかなか自分に優しい声かけができない」という人は、まずは他者に思いやりを持つことからスタートしてみましょう。

最初に、自分にとって大切な人を思い浮かべてください。友人や家族、あるいは犬や猫のようなペットでも大丈夫です。

次に、自分が思い浮かべた人がつらい状況にいるのを想像してみてください。そして、自分だったらどんな声掛けをするのか考えてみましょう。紙に書き出してみると、より効果的です。

その後、もし自分が辛い状況にいるときに自分にどんな言葉をかけているか、振り返ってみましょう。友人や家族にかける言葉とは、大きく異なるのではないでしょうか。

なぜ自分自身には、友人や家族と違う接し方をしているのか。そして、もし自分自身にも友人や家族と接するときのような言葉をかけられたなら、状況はどう変わりえるか。想像してみましょう。

それを繰り返す中で、自分にだけ厳しくしてしまう理由がより具体的に見えてくるかもしれません。

セルフ・コンパッション向上におすすめのエクササイズ3. つらいときのおまじない

「自己肯定感が低くてつらい」と感じてしまうときには、セルフ・コンパッションを思い出すための「おまじない」を心のなかで唱えてみるのもおすすめです。

まずは「私は不安になっている」「劣等感を感じている」のように、自分が感じているつらさを言葉にしてみます。

次に、「人は誰しも不安になる」「ときにはネガティブになってしまうのが人間だ」といったように、共通の人間性を思い出してみましょう。

最後に、自分に対する優しさを表現する言葉を探してみましょう。「自分に優しくするために、いま必要な言葉はなんだろう」と考えてみてください。

自分に必要な言葉を自分で知ることは、自分への思いやりを持つ上で大きな手助けをしてくれますよ。

自己肯定感が持てない自分にも、セルフ・コンパッションという優しさを

自分との接し方は、長い時間をかけて固定化されるものです。これまで自分に厳しく接してきた人ほど、すぐには自分に優しくできないかもしれません。

しかし、焦らなくて大丈夫。なかなか変われない自分のことも、優しく受け入れてあげましょう。

少しずつ、自分にも優しい言葉をかけられるようになるはずです。

セルフ・コンパッションについてもっと知りたい人は、ぜひ提唱者のクリスティン・ネフ氏の書籍もチェックしてみてくださいね。

(ウェルなわたし/ 織田 諒)

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