社説:G7外相会合 ガザ戦闘休止へ行動を

 市民の犠牲をいとわない苛烈な人道危機を一刻も早く止めなければならない。

 先進7カ国(G7)の外相会合が東京都内で2日間にわたって開かれた。

 外相声明には、パレスチナ自治区ガザを統治するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃に端を発する軍事衝突とその後のガザ情勢を巡って、戦闘の「人道的な休止」を盛り込んだ。

 ハマスに連れ去られた人質の即時解放や国際人道法の順守をはじめ、ガザへの医療物資や食料などの搬入にも言及した。

 イスラエルに対する各国の立ち位置の違いもあったが、かろうじて「休止」要求で一致した形だ。実現への行動を急いでほしい。

 ハマスの越境襲撃から1カ月が経過し、イスラエル軍は事実上の地上侵攻を始めている。パレスチナ側の犠牲者は1万人を超えた。約7割は戦闘とは無関係の女性や子どもたちとされる。

 イスラエルに強い影響力がある米国は戦闘の一時停止を働きかけているが、イスラエル側は応じようとしない。

 それどころか、閣僚の1人からは「核兵器の使用も選択肢の一つ」という発言も飛び出している。

 イスラエルの攻撃はもはや自衛の域を超えている。病院や学校、難民キャンプへの攻撃が相次ぐ。ハマスが住民を「人間の盾」にしていると主張しているが、民間人の犠牲を顧みない攻撃は国際人道法に反する。

 ロシアのウクライナ侵攻では、G7はロシアの無差別攻撃を戦争犯罪になると厳しく批判した。

 一方で、イスラエルの行動には一致した批判ができていない。

 人道問題に対するダブルスタンダードとも取れる態度を続ければ、G7は国際社会で存在意義を失いかねない。

 外相声明では、ウクライナ侵攻を続ける対ロシア制裁の継続方針や、「自由で開かれたインド太平洋の実現」も確認し、中国へのけん制をあらためて確認したが、こうしたメッセージも見透かされかねない。

 日本はこれまで中東和平に対して平和共存を掲げて関与してきた歴史がある。上川陽子外相も今回の会合前にイスラエルやパレスチナ自治政府を訪問し、人質の即時釈放や国際法に従った行動などを呼びかけた。

 G7議長国の任期は残り2カ月ある。人道主義に基づく存在感を発揮してもらいたい。

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