付き合ってもすぐに振られる…“尽くす女性”が失敗しないコツ

好きな人のためにあれこれと考えては手を差し出すのは、悪いことでは決してありません。

「好きだからこうする」に本当に満足していれば、見返りを渡さない相手を責める気持ちは生まれないもの。

「私はこんなに尽くしているのに」とネガティブな感情を覚えるとき、そこには「相手のため」ではない何かがあるのかもしれません。

「付き合っても最後は別れを選ばれる」と話すある女性は、自分の在り方の何を見落としていたのでしょうか。

尽くしても別れを告げられる…その原因とは

「尽くす自分」が好きなはずが…

32歳の有里さんは、ひとり暮らし歴が10年を超える「ベテランです」と笑いながら話しますが、料理の腕が立ち掃除も丁寧で、生活する環境を自分で整えることを忘れない力強さがあります。

販売の仕事は「愛想笑いで何とか乗り切っています」と言いながらもしっかりとこなし、ボーナスの査定が下がることはないそう。

メイクもファッションも自分の「好き」を大切にする有里さんの姿は、落ち着きがあり柔らかい雰囲気で、「モテるだろうなあ」と筆者は思っていました。

ところが、恋愛の話になると表情がふっと暗くなる有里さんには、「好きになった男性とお付き合いまではいけるのですが、すぐ振られます」という悩みがありました。

交際の内容はどうなのか尋ねると、

「私と同じ会社員の男性を好きになることが多いのですが、自炊が苦手って言うからお弁当を作って朝に届けたり、休日はおうちデートのついでに部屋の掃除をしたり、自分では尽くしているつもりです。

手料理を喜んでくれる人が多いのでがんばって作るのですが、いつも『そこまでしなくていいよ』と言われます。

だんだん連絡が減ってきて会わなくなって、最後は別れようと言われるパターンが多いです……」

と、「尽くしているのに最後は捨てられる」恋愛が多いことがわかります。

いわゆる「尽くし型」の彼女は、そうする自分が好きで「見返りがなくても不満はありません」ときっぱりとした声で言い、実際にそれで喧嘩になったこともないそうです。

自分のためにあれこれと考えて動いてくれる「いい彼女」のはずなのに、どうして最後は切られてしまうのか。

そこには、男性が抱える「不自由さ」がありました。

「尽くされる側」の気持ちとは

「恋愛に自信がない」と低い声で漏らす有里さんには、最後にお付き合いした男性から「縛られるのが大変だった」と言われたことが今もつらい記憶として残っていました。

「縛るようなことはしていなかったはずです。

彼が週末に飲み会に行くのも止めなかったし送り迎えまでして、次の日も彼の好きなように過ごしてもらっても私は何も文句は言わなくて。

女友達とか会社の人とか、いろんなお付き合いがあるじゃないですか。

そこに口を出すのは私がされても嫌なことだから、不満を言ったことはなかったのですが」

そんなつもりはまったくないのに真逆の思われ方をされることが、有里さんには理解できませんでした。

具体的にどんな状態だったかを聞いてみると、「飲み会のときは彼から連絡があるまで起きて待っている」「次の日は胃腸に優しい食事を用意する」「その後一日家でダラダラしたい彼のために自分は掃除などをする」で、有里さんの言動の基本に彼への配慮が見えてきます。

第三者として聞いていれば、「できる彼女」であり彼氏は果報者だと感じますが、一方でそれをされる男性の気持ちに立ったとき、景色はがらっと変わります。

「自分のことは気にせず寝ていてほしい」と彼氏が言っていたこと、それに関わらず「心配だから」と迎えに行くことを提案し続けたこと、「掃除なんかしなくていいよ」と言われたのに、「飲み会の次の日で疲れているでしょう、私がやるから」とソファで横になる彼の前で掃除機をかけていたこと。

男性にとっては「そこまでしなくていいのに」と感じるのが「尽くす」有里さんの姿。自分の提案を受け入れないことが、「縛られる」という実感につながった可能性がありました。

飲み会は久しぶりに会う友人たちと一緒と有里さんは聞いており、「夜中まで話していたいけれど自分の部屋で待っている彼女を思えばそうもいかない」、という窮屈さを彼氏が覚えたかもしれないことは、有里さんは想像していませんでした。

「縛られる」のは自分の言動についてではなく、彼女である有里さんの好きなように「させるしかない」ことが、男性にとっては不自由さを生んでいたのではないでしょうか。

「対等でない」関係になっていた

規則正しい生活で仕事にも前向きに取り組み、仲のいい女友達も多い有里さんは、心が自立しており他人を振り回すような不安定さは見えません。

お付き合いは対等な関係であって、「女性だからこうしてもらう」「彼氏なのだからこうするべき」のような古い価値観も、有里さんは持っていませんでした。

それらは話していると伝わってきますが、だからこそ尽くすことを「自分だけの満足で置ける」強さがあって、見返りがなくても彼氏を責めずにいられるのだと思います。

一方で、男性からの提案を拒否する、「しなくていいよ」と言われたのに「気にしないで」で済ませて“やってしまう”強引さは、思いやりや配慮とはまた方向が違うかな、とも感じました。

有里さん自身が構わないと思っても、「先に寝てくれるほうが気楽でいられる」というのが彼氏の本心かもしれず、「迎えは来なくていいよ」と言われたときにそこまで話し合えなかった心の距離は、普段から「そう言ってもこの子は自分のしたいようにする」という諦めが男性の側にあったのかもしれません。

ソファでだらけているときに目の前で掃除機をかけられたら、有里さんは気にしなくても男性のほうはわずかな罪悪感を抱えることは、想像できました。

そんな窮屈さが「縛られる」という実感を生んだのかもしれず、対等な交際のつもりでも実際は「彼女の尽くしたい気持ちを受け入れるしかない」という状態で、そんな男性の気持ちを有里さんは見ていませんでした。

相手の「思いやり」のとおりに動かなかった…

やんわりとそう伝えると、「強引だなんて、そんな」と有里さんは驚いたように目を見開きました。

自分のしていることは男性にとって喜ばれるはず、という思い込みが強いと、そんな自分が違う見方をされていることに戸惑いを覚えます。

「迎えはいいよ」という彼氏からの提案を「却下した」とは有里さんは思っておらず、「それは私への気遣いだから、私が大丈夫と言うならそれを信じて」とあくまでも彼氏への優しさのつもりで、迎えに行くことにこだわりました。

ここできっぱりと「寝ていてくれるほうがこっちも気楽だから」と彼氏が言えていれば、また違う方向になったのだろうと思いますが、それは有里さんの優しさを否定すると考えれば口にしづらいかもしれません。

すれ違いは、彼氏の側から伝えられる有里さんへの「思いやり」を、彼女が受け取らないことです。

「掃除なんてしなくていいよ」という彼氏の言葉は、有里さんにとっては「私にゆっくりしてほしいという配慮」であって、その受け止め方は正しいのに肝心の「本当にゆっくりする」を、有里さんは叶えていないのですね。

彼氏にとっては「一緒にダラダラしたい」が本心であったかもしれず、それを確認しないことがすれ違いを大きくします。

有里さんが尽くしたいと思うのと等しく、男性のほうにも彼女に向ける優しさがあり、それを否定されたと感じ続けることが交際を難しくするのではないでしょうか。

「受け入れる」ことも大きな信頼

男女関係なく、好きな人のために何かしたい、自分の力を役立てたいと思うのは、愛情の現れですよね。

それを「させてくれる」ことで相手の愛情を感じる、という場面も多いですが、尽くすのが一方的になるときが問題です。

「しなくていいよ」「大丈夫だよ」と言われたときは、相手の「どうしたいか」まで確認する姿勢が、こんなすれ違いを防ぎます。

相手の優しさや思いやりをきちんと受け止めることは、愛情と等しく信頼を育てるのです。

「相手のために」と思っても実はそうじゃない、なんて知ることは悲しいときもありますが、底に横たわるのが自分への愛情だとしたら、それは受け入れて「わかった」と返す姿が相手にとっては信頼になります。

「本心を伝えてもいいのだ」の安心感が、「1時を超えても連絡がないときは寝ていてね」のような相手の気持ちを汲んだ次の提案を生みます。

「尽くし型」の人に多いのが、自分の提案を「思いやりから却下する相手」にさらに自分のしたいことを押し付ける姿。その場で「あなたはどうしたい?」と本心を確認する一呼吸があれば、窮屈さを避けられるはずです。

尽くされる側に立てば、自分のためを思って動こうとしてくれる相手にはまず感謝の気持ちがあり、そのうえで「叶えられないときもある」のはお互いさま、素直に本心を伝えられる心の距離感を大切にしたいですね。

有里さんは、彼氏の気持ちをいっさい聞いていなかった自分に気が付き、「縛られる」の意味は不自由さにあった可能性を考えていました。

よかれと思ってあれこれ手を尽くしていた自分と、そうではなかった彼氏の本心は今となっては確認するすべもありませんが、愛情があっても「受け入れてもらう」が叶わない関係では続かないこともある、と知ることで次の恋愛はまったく違うものになるはずです。

尽くしたい気持ちを否定されることは悲しいですが、何より確認したいのは相手の本心であり、お互いに伝えあって「ふたりにとって良い提案」ができることが、幸せな交際では重要です。

見返りの有無に関係なく、向けてもらった優しさはしっかりと受け止める力も、ふたりの信頼を強くします。

尽くしたいときこそ相手の意思を知ろうとする姿勢を、忘れたくないですね。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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