JRからハピラインにバトン…気になるダイヤ、運賃 福井県民に愛される鉄道になるには

混み合うJR福井駅のホーム。利用客からはハピラインふくいに期待する声が聞かれた=10月
【グラフィックレコード】気になるダイヤ、運賃

 JR細呂木駅(福井県あわら市)前の「えきまえカフェ」にお年寄りの笑い声が響く。常連の76歳女性は車の運転免許を持っておらず、買い物や通院で出かける際は電車だ。1時間に1本ほどと便は少ないが、お茶をしながら電車を待つ時間も悪くない。「鉄道は生活になくてはならないもの」と話す。

 来年3月の北陸新幹線県内延伸に伴い、JR北陸線の県内区間は第三セクター「ハピラインふくい」が引き継ぐ。人口減などで厳しい経営が予想され、普通運賃は現行の1.15倍に引き上げる計画だ。福井-敦賀間は990円が1140円に、細呂木-福井間は60円高い480円。開業6年目以降は1.20倍になる。

 女性は「そりゃあ安いに越したことはない。でも地方鉄道の維持って大変なんでしょ」と理解を示す。県の統計によると細呂木駅の乗客数は減少を続け、ここ数年は1日平均60人前後。「小さい駅だけど、交通とにぎわいの大切な拠点。ずっと残してほしい」

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 ハピラインふくいの経営計画では、会社員向けの通勤定期が現行の1.15倍、6年目以降は1.20倍になるのに対し、通学定期は1.05倍に据え置く。敦賀市内から通う藤島高2年の生徒は「学生に配慮してくれた」と好意的に受け止める。運賃以上に気になるのは、計画に「計24本増やす」とあるダイヤだ。

 JR福井駅から高校まで自転車で通うこの生徒。下校後は敦賀市のスイミングクラブの練習に間に合うよう、全速力でペダルをこぐ。乗り遅れて次便を待った経験が何度もあるため「本数が増えるのはうれしい」。福井-敦賀間で走らせる計画の快速列車も楽しみにしている。

 福井発の最終列車を20~30分繰り下げる案には、酔客以外からも賛同の声が聞かれる。鯖江市に住む40代の公務員男性は、残業を終え午後11時過ぎ、終電で帰ろうと小走りでJR福井駅の改札に向かった。「仕事が立て込んだ日でも余裕を持って職場を出られる」と新ダイヤに期待する。

 運賃やダイヤが大きく見直されるハピライン。「鉄道の将来を自分事として捉え直す良いタイミングだ」と話すのは、NPO法人ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)事務局長の清水省吾さん(63)。「多くの人が鉄道を使うことで駅周辺に活力が生まれる。駅前で定期的にイベントを催すなど、運営会社と地域が連携して在来線の魅力を高めていくべきだ」と語る。

 武生高2年の男子生徒も関心を持つ一人だ。「鉄道中心の街づくりをするには?」をテーマに探究活動に取り組み、武生駅を例にバスとの乗り継ぎを考慮したダイヤ案などを探っている。

 自身も敦賀市からJRで通学する。車窓の景色が好きで「沿線の風景や名所を紹介するアナウンスがあれば面白いのに」などと通学中に考えを巡らせている。「ハピラインに変われば経営の自由度が増すと思う。運賃や便数以外にも工夫を凝らし、今以上に、県民に愛される鉄道になってほしい」

⇒「【記者のつぶやき】鉄道のある日常」を読む

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 来年3月の北陸新幹線福井県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」。の第5章テーマは「ハピラインにバトン」。新幹線開業後、JR北陸線を引き継ぐ第三セクター「ハピラインふくい」の展望や課題を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン・各章一覧

【第1章】福井の立ち位置…県外出身者らの目から福井の強み、弱みを考察

【第2章】変わるかも福井…新幹線開業が福井に及ぼす影響に迫る

【第3章】新幹線が来たまち…福井県外の駅周辺のまちづくりなどをリポート

【第4章】駅を降りてから…観光地へどう足を運んでもらう?

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