滞る福井市の小中学校再編議論…かみ合わない市側と住民 小学校は複式学級が11校

殿下小学校で授業を受ける児童。殿下中学校は本年度末で廃校の方針が決まっている=11月1日、福井県福井市の同校

 福井県福井市では少子化が進む中学校、小中学校の再編が課題になっている。市内の小学校50校のうち複式学級があるのは11校で、3年間で4校増加した。将来を見据え小中計20校で「再編の協議が必要、望ましい」とされるものの、市内で方針が決まっているのは数校のみ。学習環境の充実に向けて早急な対応が求められるが、市教委は保護者や住民ら地域の主体性に委ねており、議論は進まない状況にある。

 本年度で廃校となり清水中に統合される方針が決まっている殿下中と、複式学級が続き休校時期を協議する殿下小―。児童生徒数は計8人で、授業は教諭と子どもたちの対話で進んでいく。「教室にたくさん子どもがいたら、いろんな意見が出るかもしれないね」。道徳の授業で教科書を読みどう感じたかを発表する際、教諭は「別の考え方もしてみよう」と児童に呼びかけた。

 小学校の複式学級は2学年で16人以下の場合、原則的に設けられる。授業は教諭が1時間の中で2学年分を指導、2学年分の学習内容を年度ごとに分けて指導するなどさまざま。羽生小では国語と算数のみ単式で取り組むなど、各校が工夫してこなしている。

 少人数教育は一人一人に合ったペースで授業を進められる一方、人間関係が固定化し子ども同士の切磋琢磨(せっさたくま)が難しいとされる。殿下小中に通う児童の1人は来年度から清水地区の学校に通うことについて「授業でいろんな意見が出たり、友達と遊んだりするのが楽しみ」と期待する。

 市学校規模適正化検討委員会が、市内小中の子どもたちの学び環境として適正規模・適正配置に焦点を当てた再編案をまとめ市に答申したのは2020年5月。「統廃合ありきではない」という前提だが、対象となったのは児童数が増加する森田小など市内北部地域を除き、児童生徒数が減少している臨海地域や中山間地域で、複式学級になっている、あるいは将来的になる学校だ。

 答申では市内8エリアについて、小中学校の隣接地区への統合・再編などを提言。20~21年度にかけて市が対象地域で住民との意見交換会を開催した。現在、8エリアで方針が決まったのは森田、殿下地区のみ。森田では森田、河合地区を校区とする九頭竜中を新設し26年度に開校、現在の森田中を改修して27年度に森田小を2校化する。

 市教委は対象地域の住民らが主体となった議論を期待。「市側が案を示すことは強制的なものと捉えられかねない」と、住民や保護者側から要望を受けた場合、検討材料を提示するとしている。ただ、意見交換会が一巡して以降、統廃合に関する話は滞っているのが実情だ。

 規模適正化の対象となっている地区の自治会連合会長は危機感を持ちながら「小中生の保護者や、地域としても統廃合の議論を進める必要性は感じる」と話す。一方で「市の動きがにぶい。現状がどうなっているのか分からず、意見を集約するなど何をするべきなのか言ってもらわないと難しい」と困惑する。

 小中学校施設の老朽化も進み、改修などは適宜行っているが、古い校舎では1960年代に建てられたものもある。規模適正化の対象校に子どもが通う保護者は「具体的に議論の材料を示してくれないと時間だけが過ぎていく」と懸念する。

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