大分トリニータ 今季限りで退任する下平隆宏監督にインタビュー「観客1万人を超えたときは全ての試合で勝つことができた」 【大分県】

下平隆宏監督との契約を今季限りで終了する-。大分トリニータからその旨を伝えるリリースが出たのは、今季のリーグ戦が終わる2日前となる10日の午後。この決定は発表日の2日前の8日に、小沢正風社長、西山哲平GMから下平監督へ伝えられた。

今季は目標のJ1昇格を果たせなかったが、J2で中位の強化費で前半戦を2位で折り返し、シーズン終盤まで上位争いに加わった。ボールを動かし、相手の隙を突くサッカーに、「プレー強度と縦に速いスタイルをもたらした。(チームが)次のフェーズに行けたことは間違いない」と西山GMは評価する。それでも来季の契約に至らなかったのは「軽い失点が多く、勝ち点に結びつかなかった。それが最後まで改善できなかったこと」に尽きる。

最終節が終わった直後に下平監督に話を聞いた。

Q:今シーズンを終えての感想は?

1万人を超える方の声援が後押ししてくれ、(最終節を)勝利で終えることができてうれしいです。

Q:就任してから2年間でチームに残せたもの、積み上げたものは?

最後の4試合で自分の色を出せた。就任当初に理想とするスタイルであった4-3-3のシステムを試したのですが、なかなかうまくいかず、結果につながりませんでした。そこから試行錯誤して、選手に合った戦い方を選びながらやってきました。昨年はJ1復帰が使命であったこともあり、結果を出さなければいけないことにこだわり過ぎた部分があった。1年かけて土台をしっかりつくるべきだったと反省しています。今年は主力だったメンバーが抜けて、苦しい中でスタートしました。なんとかやりくりして結果を出そうとしました。前半戦はいい結果となりましたが、途中からけが人も増えました。今思えば最後の4試合で見せたものを、もっと早い段階で提示し、我慢しながら落とし込んでいたら良かったかなと思います。ただ、結果を優先しなければいけない中で時間がなかったのも事実です。

Q:今季は選手と共にチームをつくり上げる「共創」を掲げましたが、そのアプローチについて思うことは?

僕自身初めての試みでした。トップダウンではなく、ボトムアップでチームをつくっていきました。選手が非常に力を出してくれて、前半戦の快進撃はチームの一体感を勝利に結び付けることができました。しかし、結果が出なくなり、勝ち切れなくなったときに手を差し伸べるべき具体的な修正案を出せばよかったと感じています。

Q:選手の力で乗り切ってほしい、託そうという思いがあったのでしょうか?

選手とスタッフの意見がすり合うような形にしようという考えがありました。

最終節は勝利で終えた

Q:レゾナックドーム1万人プロジェクトについては?

昨年から観客が1万人を超えたときは全ての試合で勝っています。選手はたくさんのファン、サポーターの前でプレーするのは気持ちいいし、あの雰囲気に後押しされて結果につながったのは確かです。予算が潤沢にあるクラブではないので、多くの方がスタジアムに来て、ファン、サポーターとなり、そこにスポンサーが付いて予算が回るようになればと思い(毎試合1万人を呼ぼうと)動いてきました。今季は昨季より平均観客数が3000人増えました。遠回りだけどこれからも地道な活動が必要だと思います。

Q:この2年間は若手が成長しました。その中で弓場選手、保田選手の評価は?

初めて彼らを見たときに面白い選手だと思いました。昨年のルヴァンカップで初めて2人を起用したとき、いずれこの2人がトリニータの中盤を支えると感じさせるプレーをしてくれました。今年は主軸になってくれると期待していたし、順調に成長してくれました。アカデミー育ちの選手が中盤でプレーすることは、クラブとして素晴らしいこと。どのクラブでも生え抜きのボランチや中盤の選手がいるチームは強い。彼らにはずっとトリニータでプレーしてほしいですね。

Q:最後にチームに足りないもの、提言があれば。

去る監督が言うべきことではないので、個人として思ったことです。今年1年間感じたのは得点の部分です。試合を支配し、決定機をつくりながらもゴールネットを揺らすシーンがなかったのは課題だと感じました。

写真は全て大分トリニータ提供

今季で退任する下平隆宏監督

(柚野真也)

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