県内カメムシ大発生 悪臭、建物にびっしり

寺院の柱に張り付いた大量のカメムシ=10月19日、輪島市門前町剱地

  ●暖冬なら来春も注意

  ●殺虫剤品切れ続出

 石川県内でカメムシが大量発生し、住民が悪臭被害に苦慮している。今秋は山間部に加えて市街地にも多く、能登では1軒当たり1日20~30匹が見つかるケースも。宿泊施設では利用者から苦情が寄せられ、ホームセンターでは殺虫剤の品切れが相次ぐ。専門家によると、餌となる針葉樹の果実が豊富だった影響とみられ、この冬の気温が高めで推移した場合、越冬して来春に再び大量発生する恐れもある。

  ●餌が豊富

 各地で確認されているのは果樹に損害を与える「クサギカメムシ」で、能登の中山間地に加え、金沢や南加賀でも多く見つかっている。

 穴水町の山間部に位置する下唐川地区の加代正区長(74)は「感覚的には例年の4、5倍はいる。11月に入ってから200~300匹は駆除した」と疲れ切った表情。壁や窓に数百匹が止まっていたという中能登町鹿島小の宮下慶子校長は「給食の時、臭いがして気持ち悪いという児童もいる」とため息をついた。

  ●靴の中を確認

 輪島市門前町の真宗大谷派光琳寺(こうりんじ)では10月下旬、建物の柱などにカメムシがびっしりと張り付いているのが見つかった。同町に住む30代女性は「洗濯物は外で干せないし、朝は靴の中にカメムシがいないか確認している。『ブーン』と家の中を飛ぶ音で夜も眠れない」とうんざりした様子で語った。

 悪影響は観光業にも及んでおり、加賀市山中温泉の旅館「すゞや今日楼(こんにちろう)」の須谷晋也会長(77)は「宿泊客から部屋の変更を求められた」と振り返った。七尾市の山あいにある宿泊施設では、職員が館内を回り1日100匹以上を駆除しているという。

 一方、市街地にある野々市市ふるさと歴史館でも例年の1.5倍近い個体が見つかっており、玄関口のすのこの下、ドアに貼られたポスターの裏などに10~20匹が隠れており、職員を驚かせた。

 大量発生を受け、カメムシを退治する殺虫剤は品薄となっている。金沢市大友2丁目の「コメリハード&グリーン金沢大友店」では、カメムシ用殺虫剤が品切れとなり、代わりにクモ用を勧めている。同市内の別のホームセンター担当者は「全国的にも同じ状況のためメーカーに注文しても商品が入ってこない」と説明した。

  ●スギ花粉増が原因か 県立大・弘中准教授

 害虫に詳しい石川県立大の弘中満太郎准教授(応用昆虫学)は、カメムシ大量発生の要因について「スギ花粉の飛散量増加が影響したのかもしれない」と指摘する。

 弘中准教授によると、花粉が多かったことで、カメムシの餌となる針葉樹の球果がよく実り、例年なら淘汰(とうた)される個体が多く生き残った可能性があるという。

 クサギカメムシは越冬するため、木の皮の隙間や落ち葉の間に潜り込む習性があり、家屋の隙間にも入り込んでくる。例年は冬の寒さで多くが死ぬが、暖冬の場合は生き延びる個体が増える恐れがあり、弘中准教授は「ウメやサクランボなど春から初夏に掛けて実る果実に再び被害が出るかもしれない」と注意を呼び掛けた。

 ★クサギカメムシ 日本、台湾、中国など東アジア原産。リンゴやカキといった果実、豆類の生育を妨げることに加え、越冬場所を求めて家の中に入り込むことから不快害虫や衛生害虫とされる。体長は1.5センチ程度で暗い褐色の体に茶褐色の斑文がある。5~8月に産卵、秋頃には成虫となり、一部の個体は越冬して翌年4月ごろに再び活動を始める。

カメムシ用殺虫剤と代用品のクモ用殺虫剤が完売した売り場=金沢市内のホームセンター

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