ころ柿猛暑で不作 志賀町特産、炭そ病流行

炭そ病にかかった柿の実=志賀町倉垣

  ●農家苦境 出荷4割減、収入3%も

 志賀町特産の干し柿「ころ柿」の出荷量が今年、炭そ病の流行によって例年の4割減の25トン程度にとどまることが14日、分かった。今夏の猛暑で樹勢が衰えたところに病気がまん延したとみられる。収穫が9割減という農家や、収入が3%にまで落ち込む生産者もいて、石川県最大の産地の農家は異常気象による想像以上の被害に落胆している。

 炭そ病は、果実に黒い斑点ができる病気で、斑点部から傷み出して落果する。空気感染するため、生産者は早期に消毒を施して被害を抑えてきた。ただ、今年は夏の記録的な猛暑で木が衰弱し、炭そ病の広がりを食い止められなかった。

 50年以上、主力品種「最勝(さいしょう)」を生産している女性(75)=志賀町矢駄=は「管理している柿の木55本のうち、まともに収穫できたのは4本だけ。ここまでひどいのは初めてだ」と嘆いた。

 60代男性=同町倉垣=は「病気の広がりや肥料の高騰でコストは増えているのに、収入は例年の3%ほどにしかならない」とため息をついた。

 JA志賀ころ柿部会の吉野成明部会長(67)=同町矢駄=は「実が大きく育つ8月下旬と、病気が広がる時期が重なり、大幅に減産した。水やりなど猛暑対策をしても効果がなかった農家も多い」と話した。

  ●日焼けでも被害

 JA志賀によると、柿の木が密集する同町安津見西山の選果場周辺で被害が深刻となっている。谷あいで周囲に建物もないため、風が吹き込み、被害も広がりやすい。

 ころ柿部会の生産者は111人で、例年は約40トンを出荷する。昨年度の売上高は約1億2千万円だった。炭そ病だけでなく日焼けの被害もあり、担当者は「市場の単価にもよるが、今年度は8千万円ほどにまで落ち込むだろう」と推測する。

 出荷に向けた検査は25日に行われ、12月上旬にも県内各地の店頭に並ぶ。吉野部会長は「農家の努力がなければ4割減どころではすまなかった。少しでも多くの人に自慢の味を届けられるよう、生産に励みたい」と話した。

 ★能登志賀ころ柿 毎年10月下旬に収穫した最勝柿の実をつるし、手もみなどの作業を経て11月下旬に出荷する。深いあめ色と果肉の軟らかさ、素朴な甘みが特長で、2016年に国の地理的表示保護制度(GI)に登録された。

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