【シンガポール】ア太平洋の店舗で顔認証決済[IT] NEC、マスターカードと提携し

NECは、シンガポール・フィンテック・フェスティバルで顔認証決済を紹介している=15日、シンガポール東部(NNA撮影)

NECはアジア太平洋地域の店舗で顔認証決済サービスを展開する。このほど戦略的提携を交わした米マスターカードの加盟店で、数カ月以内に開始する予定だ。顔認証決済の普及はまだこれからという域内市場で需要を掘り起こし、迅速で安全な決済手段として広げたい考えだ。

NECは日本国内では顔認証決済サービスを自社単独で開発・展開しており、複数の納入実績がある。同様のサービスでクレジットカード会社と提携するのは今回が初めて。海外で本格展開するのも初となる。

マスターカードとの提携の下、数カ月以内にアジア太平洋地域のマスターカード加盟店で顔認証決済サービスの提供を開始する。具体的な提供国・地域は検討中だ。

顔認証決済では利用者のIDと生体情報をひもづけるとともに、事前登録したクレジットカードなどの決済手段とIDを連動させる。利用者は店舗の端末に顔をかざすだけで決済が完了する。暗証番号の入力やバーコード読み取りなどの手間がなく、現金やカードを持ち歩く必要もない。

顔の生体情報は自分のスマートフォンなどで簡単に登録が可能だ。店舗側も専用端末を用意しなくてもタブレットなど自社端末で対応できる。

NECは顔認証の精度で世界一を5回獲得した高い技術力を持つ。マスクを着用したままでの顔認証にも対応している。今回の提携では自社の技術力とマスターカードの幅広い加盟店ネットワークを生かし、生体認証決済を安心して利用できる環境を整えたい考えだ。

NECの金融ソリューション事業部門デジタルファイナンス統括部ディレクターの行武徹也氏はNNAに対し、「日本を含むアジア太平洋地域で顔認証決済の普及はまだこれからだ。まずは世界でも同決済の受容性が高いとみている域内で展開する」と説明した。

■世界規模での提供目指す

マスターカードは昨年5月、生体認証決済の実現・普及に向けて他社と連携する取り組み「バイオメトリックス・チェックアウト・プログラム」を提供すると発表。NECなど複数の企業と提携すると明らかにしていた。今回の提携はこうした動きの一環となる。

同プログラムは、セキュリティーやプライバシー保護などで金融機関や小売店、テクノロジー関連企業が順守すべき一連の基準、要件を定めている。プログラム加盟店はレジ待ち列の短縮やセキュリティー・衛生面の強化などが期待できる。

NECはマスターカードとの提携を通じてアジア太平洋地域を皮切りに、将来的には世界規模でNECの顔認証技術を使った決済を店舗に提供することを目指す。

■フィンテック展示会でPR

NECは、17日まで3日間にわたりシンガポールで開催中の大規模なフィンテック(ITを活用した金融サービス)イベント「シンガポール・フィンテック・フェスティバル(SFF)2023」に自社ブースを設け、顔認証決済を体験できるデモンストレーションを実施している。

行武氏によると、来場者からは「すぐにスマートフォンで登録でき、決済も素早くできるので驚いた」といった声が聞かれた。同氏は「まず顔認証決済というサービスがあることを知ってもらい、今後3~5年で一般的に使われるようになってほしい」と意気込みを語った。

NECは東南アジアで生体認証技術に関する案件を複数受注している。シンガポールでは出入国システム向けに同技術を提供。ベトナムでは昨年4月、NECの技術がベトナムの新しい国民ID(個人識別)システムに導入されたと発表していた。

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