クマ厳戒、狩猟解禁 出没増で県が注意呼び掛け

獲物を探すハンター。今秋はクマの大量出没で、富山県が警戒を呼び掛けている=15日午前9時半、富山市町袋の常願寺川河川敷

 富山県内で15日、狩猟が解禁され、ハンターが日の出とともに河川敷や山に繰り出した。今秋はクマの出没や人身被害が相次ぎ、猟場である河川敷でも目撃が多発している。厳戒態勢を敷く県は、狩猟解禁に合わせたパトロールでハンターにクマ鈴の携帯など注意を呼び掛け、野鳥狙いの狩猟者は「どこにクマがいてもおかしくない」と警戒を強めながら獲物に照準を定めた。

 「クマはどこにおるか分からん。気を付けないと」。富山市猟友会の杉本忠夫会長(76)=富山市水橋常願寺=はこう自身に言い聞かせ、常願寺川河川敷へキジを狩りに繰り出した。市猟友会は18日に役員会を開き、会員に注意喚起を促す。

 杉本会長は、野外での活動に慣れたハンターはクマへの注意も怠らないとした上で「例年以上に遭遇の可能性は高い。一人で行動せず、犬を連れている場合はその反応も見て警戒すべきだ」とした。クマ用の銃でなくとも、発砲すれば音でクマを驚かして退ける効果はあるという。

 常願寺川河川敷では県外のハンターの姿も見られた。毎年訪れている塚本典世さん(45)=大阪府=は友人4人と日の出から獲物を追った。正午までにカモ3羽を仕留めた塚本さんは「クマの大量出没を聞いており、細心の注意を払っている」と強調した。

 県と県警は猟場となっている常願寺川、神通川、黒部川の河川敷、山間部でパトロールを展開した。法令違反がないかチェックするとともに、安全対策の強化を求めた。

 クマは、狩猟解禁前には自治体の指示を受けた駆除のみ可能だったが、解禁後には狩猟ができるようになる。富山県の今年度の年間捕獲頭数上限は駆除と狩猟合わせて162頭で、15日時点ではすでに90頭がおりなどで捕獲されている。2021年は45頭(11月末)、22年は62頭(同)で、今年はすでに過去2年の同時期の捕獲数を超えている。

 県は、今後は冬眠の時期を迎えてクマの出没は減るとみて、捕獲上限引き上げは予定していない。一方、石川県は10月末時点の捕獲数が56頭となり、出没増加を受けて2年連続で上限を180頭から250頭に引き上げた。

 県によると、県内の狩猟登録者数は10月末現在、県外在住者を含めて昨年同期より38人少ない1127人。主要な狩猟鳥獣であるキジ、ヤマドリ、カルガモ、タヌキなどの生息数は平年並みとなっている。

 猟期は来年2月15日まで。イノシシとニホンジカは農作物被害防止の観点から捕獲を強化しており、猟銃、わな猟とも3月末まで。

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