「漁師も鮮魚店も知らないような魚が…」伊豆の海に異変のナゼ 夏の水温観測史上最高でキハダマグロが定置網にかかり 沖縄を代表する魚も“定住”【現場から、】

伊豆半島の海で沖縄に生息する魚が獲れるなど、静岡県内の海に異変が起きています。沖縄を代表する赤い魚「グルクン」が伊豆の東海岸で見られたり、11月に出回るはずのない夏の魚が熱海の市場に並んでいます。県内の海で一体何が起きているのか、“異変”を取材しました。

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<神谷修二カメラマン>
「伊東の海の中を潜ってみたいと思います」

静岡県伊東市のダイバー君島啓一さんに海の中を案内してもらいました。伊東市川奈はダイビングスポットとして、全国的に知られています。しかし、ここ数年海の中の様子が確実に変わってきているといいます。

<川奈日和 君島啓一さん>
「ダイバーの中では、現地のインストラクターの中では圧倒的に変わっているっていうのは、感じ取っていて、このアカオビハナダイとかケラマハナダイとか南から来る魚。いまとなっては、ほぼ南方種ではなく、伊豆にほぼ定着してしまっている」

魚の異変は、市場でも起きていました。

<宇田水産 宇田勝社長>
「まさしく夏の魚ですからね、シイラなんて。この11月にはあがるはずではない魚。これですね。沖縄にいるはずのグルクンが実は熱海でも水揚げされてきて、漁師も、ぼくら鮮魚店も名前も知らないような魚がちょびちょび揚がっている」

沖縄で生息する魚がなぜ、伊豆にいるのか。理由は海水温の上昇とみられます。

<静岡県水産海洋技術研究所 伊豆分場 岡田裕史主査>
「黒潮の大蛇行によって、温かい水が相模湾の方に流れ込んできたことが原因の一つではないかと考えています」

日本の南から東北に向かって暖かい海水が流れる黒潮。以前は、伊豆半島のはるか南を流れていましたが、ここ数年、伊豆半島の沿岸まで近づいているといいます。

伊豆半島の8月下旬の海の平均水温を見ても、以前は、25℃前後でしたが2023年は27.2℃と観測史上最高を記録しました。

<静岡県水産海洋技術研究所 伊豆分場 岡田裕史主査>
「キハダマグロの月別の定置網の漁獲データで、かなりの量とれていまして」

南の海に生息するキハダマグロ。伊豆の定置網にはほとんど入らない魚でしたが、2023年の8月は10トンを越える水揚げがありました。

<静岡県水産海洋技術研究所 伊豆分場 岡田裕史主査>
「月別に見ると、過去最高ぐらいの漁獲量がありました」

熱海市の山田屋水産は、地元の魚を中心にかまぼこやさつま揚げなど、練り製品を製造・販売しています。伊豆の海の変化は練り製品にも影響を与えていました。

<山田屋水産 福島瞳社長>
「うちなどはわかめを使った製品は数年前は不良でした。今年はひじきが全くとれない状態ということですね」

安定した原材料が確保できない中、この会社が新たに活用を始めたのが「エソ」という魚です。加工に手間がかかるため、市場ではあまり出回っていなかった魚ですが、地元の水産会社と技術協力して、さつま揚げに仕上げました。

<山田屋水産 福島瞳社長>
「とれない、とれないというよりも、とれるものを大事に使いたいと思ってます」

11月3日、「エソ」のさつま揚げがお披露目されました。

<客>
「おいひい」
「ふわふわでおいしいです」

<宇田水産 宇田勝社長>
「水温の上昇とかいろんな意味で、磯焼けとかいろんな課題があると思います。それを人間の手でなんとか元に戻すような取り組みをしていけたらいいなと思います」

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