医師死亡…娘が試験満点、妻と3人で手つなぎ喜んだ翌日に悲劇 男に銃撃され息を引き取る…目撃した男性、法廷で「顔に銃を向けられ、払うと腹へ発砲した」 医師は心臓破裂、妻「3人で喜んだ写真が最後だなんて」

さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 埼玉県ふじみ野市の住宅で昨年1月、医師=当時(44)=が散弾銃で射殺されるなど医療関係者3人が死傷した立てこもり事件で、殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職の男(67)の裁判員裁判の第7、8回公判が13日と14日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれた。証人として事件時に男宅を訪れた医療相談員の男性らが出廷し、男が医師の顔面に銃口を向けた後、腹部を狙って発砲したと証言した。

 男が医師を銃撃した当時、その場にいた医療相談員の男性は男について「当初、医師の顔面に銃口を向けているように見えた」と証言。その後、医師が「人に向けない」と銃口を払うと、直後に医師の腹部をめがけて銃撃したと話した。

 男性自身も外へ避難した後で、窓から男に発砲された。負傷することはなかったものの、発砲される直前に男と目が合ったとして「これ以上仲間を失うことへの恐怖心があった」と振り返った。

 14日には、医師の妻と父親が思いをつづった文章を検察側が代読した。妻によると、医師は事件前日の昨年1月26日の夜、オンラインで行われる長女の試験を応援するために帰宅。仕事で忙しく、普段だと帰宅しない曜日だったが「家族のための時間をつくろうとしてくれていて、娘を育てることを楽しみにしていた」と回想。「満点を取った娘と家族3人で手を取り合って喜んだ。その時に撮った写真が最後になると思ってなかった」と心中を語った。

 また2人は医師の患者への心構えとして、病気ではなく、患者の考え方や生活を尊重していたと振り返った。

 起訴状などによると、男は昨年1月27日、自宅で散弾銃を発砲して医師を心臓破裂で死亡させ、理学療法士の男性=当時(41)=に肝損傷などの重傷を負わせた。さらに、医療相談員の男性=同(32)=に催涙スプレーを放ち、路上にいた別の医療相談員の男性=同(42)=に別の散弾銃を放って殺害しようとしたとされる。

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