●20日、本番に向け準備
黒部市宇奈月町下立(おりたて)地区に伝わる越中の田の神行事「おおべっさま迎え」教室は15日、同市下立まちおこしセンターで開かれ、住民らがえびす様をもてなす作法を学んだ。ユネスコ無形文化遺産に登録されている奥能登の「あえのこと」と類似した行事で、参加者は20日の本番に向け、地域で受け継いできた伝統を守っていく決意を新たにした。
市教委によると、おおべっさま迎えは1983(昭和58)年、越中の田の神行事として国の記録作成措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択された。宇奈月の下立地区を中心としたいくつかの集落のほか、魚津市、入善町にも伝わっている地域があるという。
教室は下立公民館と下立自治振興会が伝統継承のため地区住民らを対象に毎年実施している。かつては下立地区の約400軒のうち8割方で行事を受け継いできたが、年々減少している。
各家ごとに多少違いはあるが、えびす様を出稼ぎの神として11月20日に帰ってくるのに合わせ、煮しめや腹合わせのタイ、二股大根などの御膳を供え、酒を振る舞い、年明けの1月20日まで滞在してもらい、同様の食事でもてなし、送り出す。
長年行事を続けている山口幸子さん(83)、柳原欣一さん(68)が講師を務めた。山口さんは実際に作った料理を朱塗り御膳に並べて紹介した。柳原さんは夕方に神を迎え入れた後、入浴してもらい、神棚下に御膳を整え、「今年はたくさんの米と畑のものがとれた。ゆっくり召し上がってください」と酒をつぐなどの所作を説明した。
柳原さんは「とても親しみを感じる神様であり、時代に合わせて形が変わっても続けていくことが大事だ」と話した。
下立地区では1922(大正11)年の電車開通後、「えびす様が電車でおいでになる」と下立駅まで出迎えに行く家もあった。本格的な御膳でなくても、タイやタイの姿のかまぼこを供えるなど、簡略化して続けている家庭も多い。