大分市、18日から工場夜景クルーズの実証事業 観光資源化や脱炭素の取り組み発信【大分県】

モニターツアーで楽しめる大分市の工場地帯の夜景
大分市が夜景クルーズの実証事業で使うクルーズ船=大分市生石港町
夜景クルーズのコース

 【大分】大分市は、臨海部の工場夜景を観覧するクルージングの実証事業を18日から始める。臨海部は全国有数の工場地帯で、建築物や大型機器の明かりが夜の海に浮かぶ。実証実験は新たな観光資源をつくるとともに、脱炭素化を目指す工場群の取り組みを発信する狙いがある。将来的な民間による事業化を視野に、モニターツアーで需要や課題を調べる。

 白や黄、オレンジの光を放つ巨大な構造物。各所の煙突からは、もうもうと白煙が立ち上る―。きらびやかな工場夜景を有名テーマパークになぞらえてか、「ディズニー」と呼ぶ市民もいるという。

 日本の開発の中核を担う「新産業都市」の指定(1964年)に合わせ、市内の臨海部は製鉄所や石油化学コンビナートが立地。市の産業や経済の成長を引っ張ってきた。

 一方、盛んな工業活動による環境への影響が懸念されている。環境省によると、2020年度の県内の二酸化炭素(CO2)排出量は2492万トンで、県民1人当たりで見ると全国で最も多かった。

 市は「夜景クルーズ」を通し、▽製造品出荷額などが九州1位(経済産業省の2022年経済構造実態調査)▽行政や大学と共にCO2排出量を実質ゼロにする「カーボン・ニュートラル」の議論を進める―など工場群の特色を伝える方針。実証事業費は6月の補正予算で計上しており、約200万円。観光課は「地元・大分の人もあまり知らない魅力を掘り起こしていきたい」と説明する。

 ただ、本格的な事業化に向けたハードルも既に見えてきている。市によると、市内は船を泊めて発着する場所が限られ、空き状況や整備状況から継続的な確保が難しいという。今回は一時的に場所を押さえたが、管理者の県との調整などが今後の課題になりそうだ。

 市は近く、夜景を撮影したPR動画を公開する予定。来年4~6月の大型誘客イベント「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」の期間もクルーズを実施する方向で動く。観光課は「手探りの状況だが、ニーズや課題をしっかり分析し、市を代表する観光コンテンツに育てたい」と話した。

<メモ>

 モニターツアーは18日~12月10日に計14便が運航。クルーズ船(10トン、乗客の定員10人)を使う。18日は乙津泊地を、24、25、26の各日と12月8、9、10の各日は大分港西大分地区を発着するコースで実施する。各日、午後5時半からと同7時からの2便が出る。所要時間は約1時間。料金は1人500円。ガイドが同乗し、工場の概要や見どころを説明する。乗客へのアンケートで、料金やコース、時間などについての反応を探る。予約はJTBの専用サイト「たびーと」で受け付けている。希望日の2日前までに予約する。

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