大分国際車いすマラソン、女子は初出場のデブルナーが大会新V【大分県】

マラソンT34/53/54で大会記録を更新して初優勝したカテリーヌ・デブルナー=19日、大分市西浜

 第42回大分国際車いすマラソン(大分県、日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会、大分合同新聞社など主催)は19日、大分市の県庁前をスタートし、ジェイリーススタジアム(市営陸上競技場)北側の県道上にフィニッシュする国際陸上競技連盟公認コースであった。最速クラスのマラソンT34/53/54男子はマルセル・フグ(37)、同女子はカテリーヌ・デブルナー(28)のいずれもスイス勢が制した。

 男子はフグが序盤から独走し、1時間17分51秒の好タイムで5大会連続11回目の頂点に立った。2位は鈴木朋樹(29)=さいたま市=が入った。

 女子は終盤まで三つどもえの争いとなった。デブルナーが大会新の1時間35分11秒で優勝し、マニュエラ・シャー(38)=スイス=がタイム差なしの2位。スザンナ・スカロニ(32)=米国=が2秒差の3位だった。

 大会は16カ国の188人が出走。障害程度に応じた3クラスに分かれ、マラソン(42.195キロ)とハーフマラソン(21.0975キロ)で競った。沿道には多くの県民が駆け付け、力走する選手に声援を送った。

<マラソン評>

 T34/53/54男子はフグが序盤から独走。後続を6分以上引き離し、自身の世界記録まで4秒に迫る好タイムで圧勝した。日本記録保持者の鈴木が2位となり意地を見せた。中国の羅(ら)が初出場で3位に食い込んだ。

 同女子は大会新記録が誕生した。9月のベルリンマラソンで優勝したデブルナーが、初出走の大分でも強さを発揮。フィニッシュ直前で、実力者のシャーとスカロニを振り切り、女王の座を射止めた。

 T33/52男子は上与那原が3大会ぶりの栄冠を手にした。3連覇を狙った佐藤友は2位だった。

 T51男子は世界記録を持つプレアが圧巻の走りで7連覇を果たした。

 T33/52とT51に女子の出走者はいなかった。

 全クラスで63人が出走し61人が完走した。

<ハーフ評>

 T34/53/54男子は生馬が3連覇、同女子は村岡が2連覇を飾った。

 T33/52男子は伊藤竜が大会新で3大会連続の栄冠。同女子は64歳の田中が、14連覇中だった木山を抑えて優勝した。

 T51男子は長崎がトップでフィニッシュし、県勢の清水が続いた。同女子の出走はいなかった。

 全クラスで計125人が出走し、115人が完走した。

■激戦、僅差で制す

 新星が強烈な輝きを放った。

 初めて臨んだ大分の舞台。ハイペースで走り抜け、マラソンT34/53/54女子の大会記録を塗り替えた。「メモリアルな場所になった」。勝利の月桂冠(げっけいかん)を受けたカテリーヌ・デブルナー(28)=スイス=は喜びをかみしめた。

 3人で先頭集団を形成した。抜け出すタイミングをうかがったものの「向かい風だったので、最後の最後になってしまった」。夢中でスパートし、僅差でフィニッシュラインを越えた。「ただ前を見て突き進んだ。1位とは分からなかった」と激戦を振り返った。

 先天性の障害があり、8歳から車いす陸上競技に取り組んだ。昨年、教師の職を辞してプロのアスリートになった。「生徒と離れるのは寂しかったけど、選手としてチャレンジしたかった」。それまでの短距離に加えてマラソンを始め、一気に頭角を現した。

 今季は世界六大大会で3連勝と絶好調だった。9月のベルリンマラソンでは1時間34分16秒の驚異的なタイムをたたき出し、スイスの先輩マニュエラ・シャー(38)が2019年大分国際で樹立した世界記録を上回った。

 シーズン最後のレースで、沿道から熱いエールが送られる大分の魅力を味わった。「また出場したい。子どもたちの応援がすごく届いた。励まされた」。ニューヒロインは満面の笑みを浮かべた。

<メモ>

 マラソン、ハーフマラソン共に障害が重い方から「T51」「T33/52」「T34/53/54」の3クラスに分かれて競う。数字の50番台は脊髄損傷や切断など、30番台は脳性まひなどの障害の種類を示す。一の位の数は小さいほど程度が重い。

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