羽原大八さん(47)=京都府宇治市=は、スポーツ中の事故が原因で38歳の時、記憶などに支障が出る高次脳機能障害や身体障害になった。自身の変化に落ち込んだこともあったが、パラスポーツのボッチャの魅力を知り、普及活動に携わる。「障害の有無に関係なく楽しめることをたくさんの人に広めたい」と語る。
大阪府守口市で育ち、中学生の頃に宇治市に転居した。大学卒業後、ホテルの従業員を経て、家族が経営するかおり幼稚園(同市)の事務職員になった。「子どもたちと過ごす時間が楽しい」と、やりがいを感じるようになった頃、事故に遭った。
趣味で始めたボクシングだった。ジムでスパーリング中に頭に打撃を受けた後、トイレで倒れているところを発見された。急性硬膜下血腫で、医師から生存率は2%とされた。事故から2カ月間の記憶は完全にないといい、入院生活を経て10カ月後に帰宅できたが、しばらく全介助の状態が続いた。
「誰にも会いたくない」。それまで活動的で明るい性格だったが、ふさぎ込んだ。リハビリテーションに励んで少しずつ体が動くようになり、「時間の経過とともに気持ちも整理されていった」という。
現在は車いすの生活で、短期記憶や右半身のまひなどの障害が残る。リハビリに通いながら、週5日は幼稚園職員として電話対応やパソコンで会計などをこなす。
ボッチャとの出合いは今年5月。知人の誘いで社会福祉士らが開いた体験会に出向いたところ、夢中になった。
ボールを投げたり転がしたりして目標球にどれだけ近づけられるかを争う競技で、パラリンピックの正式種目にもなっている。それまで存在を全く知らなかったが、「どんな人でも勝負ができて楽しい。運次第の面もあって面白い」と魅力を説く。
体験会の運営を手伝うようになり、今月には城陽市で初めて開催した。「ボッチャを知り、人生に前向きになれた。一緒に楽しむ仲間の輪を広げていきたい」と意気込む。