産廃不法投棄で環境破壊 茨城・稲敷市に責任 市と業者に2000万円賠償命じる 公調委裁定

稲敷市小野地区での残土不法投棄について説明する坂本博之弁護士=県庁

茨城県稲敷市小野地区に産業廃棄物が不法投棄され生活環境が汚染されたとして、住民15人らが市と埋め立て業者らに約2000万円の賠償を求めた裁定申請で、国の公害等調整委員会(公調委、永野厚郎委員長)は20日までに、市や業者らの責任を認め、連帯して約2000万円の支払いを命じた。裁定は1日付。住民側の代理人弁護士が20日、県庁で会見し明らかにした。

公調委により自治体の責任が認められるのは全国的にも珍しい。公調委が認めたのは、同地区の逢善寺で枯死した樹木の交換や土壌を中和する費用を合わせた2000万円と、近隣住民1人の50年分の井戸水検査費用約18万円。

裁定文や代理人によると、2015年10月、同県美浦村の埋め立て業者が同地区の山林に土砂を埋め立てる許可を市に申請。同11月、市は廃棄物を持ち込まないことを条件に許可を出し、埋め立てが進められた。16年3~6月ごろ、許可のない区域の山林や共同墓地でも埋め立てが行われた。

19年6月、同地区の逢善寺や近隣住民が、埋め立てにより森林が破壊されたなどとして、申請を許可した市や、埋め立て業者、千葉県の土砂運搬業者などに対し、残土撤去費用などを求めて公調委に責任裁定を申請。土砂について業者側は「産廃との認識はなかった」と主張したが、裁定では、建設汚泥処理物で「基準値を超えるフッ素や強いアルカリ性による土壌汚染が生じている」と認定。市については、職員が市条例に基づき産廃物かを検討するのを怠り、許可したと結論付けた。

土砂は現在も撤去されておらず、住民側は残土処理物の撤去費用を求め、12月初旬に水戸地裁龍ケ崎支部に提訴する方針。市の担当者は「裁定の中身を精査し、今後の対応を検討している」とコメントした。

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