ショクダイオオコンニャク 世界最大の花に赤い実 国内初、種の採取も 筑波実験植物園 茨城・つくば

国内で初めて赤く結実した筑波実験植物園のショクダイオオコンニャク=つくば市天久保

茨城県つくば市天久保の国立科学博物館筑波実験植物園で、「世界最大の花」を咲かせる絶滅危惧種「ショクダイオオコンニャク」が結実し、種子が採取された。20日、一部の果実を収穫して種を取り出し、ポットに植える作業が行われた。同園によると、結実や種子の採取は国内で初めて。これまでも人工授粉を複数回試みたが、失敗。今回同時に咲いた2株を使って授粉できた。研究員は努力が実ったことに「とてもうれしい。植物の多様性を守ることに貢献できれば」と喜びを語った。

ショクダイオオコンニャクは、インドネシア・スマトラ島に自生するサトイモ科の植物。開花すると高さ約3メートル、幅約1メートルにもなり、強烈な悪臭を発する。自然界ではめったに開花しないが、同園での開花は2020年1月以来7回目。自らの雄花と雌花での自家受粉はしないという。

同園では今年5月、大小二つの個体が偶然にも1週間差で開花。先に咲いた小さい個体の花粉を使い、大きい個体に人工授粉させたところ、6月中旬に結実しているのが確認できたという。同園は以前にも何度か人工授粉を試みていたものの、いずれも結実しなかった。今回、受粉がうまくいった要因について、堤千絵研究主幹は「(二つの個体が)タイミングよく連続で開花したことが大きい」と分析する。

果実は赤く、やや楕円(だえん)形で、大きいもので直径約4センチ。職員が一つ一つ数えたところ、700個以上がすき間なくびっしりと付いていた。果実の中には、果肉に覆われた種子が1~3個入っているものもあれば、種子が入っていないものもある。

果実が熟してきたことからこの日、種子の採取が行われた。六つをそれぞれポットに植え、発芽時のカビや雑菌を抑えるため、植物用の殺菌液で浸した。1~3週間で発芽するとみられ、成功すれば、国内で採取した種子で初めて誕生する個体となる。

果実は今後、上部から徐々に収穫し、取り出した種子は園内に植えるほか、他の植物園に分けたり、保存したりする予定。

同園は結実して以来、観察を欠かさず、肥料の量や水やりのタイミングに、これまで以上に気を配ってきたという。果実は今月末ごろまで同館で見られる。堤研究主幹は「いつ開花し、結実するか分からないため、ぜひ見てほしい。発芽するかどうかも楽しみ」と期待を込めた。

ショクダイオオコンニャクの果実(左端)と種子

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