福井県の最奥地から玄関口に…冠山峠道路開通の意義 池田町、中京とつながり交通量倍増の見通し

国道417号冠山峠道路の開通を祝った式典=11月19日、福井県池田町の池田中学校
国道417号冠山峠道路

 福井、岐阜両県を結ぶ国道417号の冠山峠道路が11月19日、開通し、福井県池田町は中京方面から丹南地域への玄関口として新たなスタートを切った。町内は半世紀来の悲願達成に沸くとともに、観光振興や県境をまたいだ交流など、今後の町の変貌に期待が高まっている。

 「林道はあるが、実際は行き止まりのようなものだった」。池田町商工会の山田孝紀副参事は、最奥地という感覚だった町の状況を振り返った。

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 岐阜県をつなぐ林道が開通したのは1971年度。しかし道幅が狭く曲がりくねり、冬期や悪天候時には通行できなかった。この状況を解消しようと1973年度、福井、岐阜両県側による国道昇格に向けた国への要望活動が始まった。改良整備を目指して期成同盟会を設立し、81年度には県道から国道に昇格した。

 89年度からは、冠山トンネルの建設を目指して国に陳情を繰り返してきた。2003年度に国の直轄権限代行で事業化。しかし用地取得が難航するなどし、着工は08年度までかかった。

 50年来の悲願達成に町の担当者は「完成の喜びを一口でうれしいとは言い表せない。地元の発展を願って活動してきた先人たちの思いがある。開通を通じた観光振興など次世代に残していかなければならない」と身を引き締める。

 国土交通省の試算によると、これまで1日当たり約800台だった交通量が、開通後は約1800台と倍以上に増える見通し。観光や経済に大きな効果が期待される。

 単なる通過地点とならないよう、町は観光面のハード整備に注力してきた。今年、相次いで体験施設「ツリーピクニックアドベンチャーいけだ」を拡充。志津原地区の国道417号沿いには観光施設「道のオアシスフォーシーズンテラス」の整備を進めている。

 池田町と岐阜県揖斐川町の交流も深まりそうだ。池田町と旧藤橋村(現揖斐川町)はかつて、物産が行き交い人的交流が盛んだったが、車社会の進展で次第に途絶えていった。

 昨年以来、両町は互いのイベントに参加したり、ガイドマップを製作したりしている。ガイドマップには両町それぞれの観光スポットを載せており、今後は冠山峠を挟んだ周遊プランが展望に入る。

 これまでは県内各方面からの観光客向けの看板設置やPRだったが「今後は中京方面向けにも取り組んでいかなければ」(山田副参事)とうれしい悲鳴。今後も町内には変化が続いていきそうだ。

連載・つながる丹南―中京~冠山峠道路開通

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