通信制高、県内でも人気 中卒者進学10年で倍増 多様な学びの受け皿に

通信制の宇都宮クラーク高等学院の教室。和気あいあいとした雰囲気で授業が進んだ=10月中旬、宇都宮市昭和1丁目

 少子化が進み定員割れする県立高もある中、栃木県で通信制高校への進学者が増えている。文部科学省の学校基本調査によると、2022年3月に県内中学校を卒業した生徒の通信制高校への進学者は前年比136人増の924人。卒業生の20人に1人に当たり、10年前に比べ倍増した。多様な学び方ができるとして生徒のニーズが増しており、不登校経験者の受け皿にもなっている。

 県庁近くにある宇都宮クラーク高等学院。中学で休みがちだった生徒に配慮し、学び直しに力を入れる。週5日の登校が基本。近年はグラフィックや声優といった特設ゼミを目的に入学する生徒が増えている。

 3年の男子生徒(18)は「勉強したいスポーツのコースがあった。将来はスポーツ関係の職に就きたい」と充実した表情で語った。

 同校の卒業生でもある鈴木麻友(すずきまゆ)教諭(26)は、中学時代に不登校を経験した。「ここで学校生活を楽しむことや大学進学の目標をかなえられた。変わりたいと考えている子の力になりたい」と、生徒に向き合う。

 通信制高校は、働く若者に教育の機会を提供する目的で制度化された。全日制、定時制と同じ高校卒業資格を得られる。教科書などを使った自宅学習でリポートを提出したり、対面の授業に出席したりして単位を取得する。オンライン授業を導入する学校もある。

 県内中卒者の進学は右肩上がりだ。13年の414人に対し、22年は924人。10年で2.2倍に増えた。

 通信制専門の出版社「学びリンク」(東京都)の担当者は「小中学生の不登校の増加、興味や体調に応じた自由度の高い学習環境」を人気の要因に上げる。

 県内の県立校では宇都宮高、学悠館高(栃木市)に通信制課程がある。私立では塩谷町に本校のある日々輝学園のほか、県外の通信制高のキャンパスや分校なども多い。ネット学習などが可能なN高・S高を展開する学校法人「角川ドワンゴ学園」(沖縄県)は来年4月、県内2カ所目のキャンパスを開校予定だ。

 通信制の第三者評価を行うNPO法人全国通信制高等学校評価機構(東京都)の飯島篤(いいじまあつし)副理事長は「全日制の指導の枠にはまらない生徒が生き生きと頑張れる」とした上で、「学校によって教育の質に差がある」と課題を指摘。進学希望者に「学習指導の様子を見学し、雰囲気を確かめるのが望ましい」と助言した。

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