宇都宮駅東口、目玉の高級ホテル進展なく 建設費高騰などで更地のまま 市議会から「落ち度」指摘も

暫定的に広場となっている高級ホテル建設予定地

 JR宇都宮駅東口地区のまちびらきから26日で1年を迎える。整備事業の目玉だった高級ホテルの建設予定地は更地のままで、見通しが立たない状況が続く。宇都宮市によると本年度、整備主体の企業グループ「うつのみやシンフォニー」(代表企業・野村不動産)との連携を強化し、数社のホテルブランドから進出意向を把握しているものの、建設費の高騰などにより進展は見られていない。市議会からは「駅前の一等地が更地のままではいけない」などと市の対応の甘さを指摘する声が上がっている。

 高級ホテルの誘致を巡っては、市が整備方針の一つに掲げ、2019年1月にタイのホテル大手の五つ星ブランド「デュシタニ」が進出を予定していることを明らかにした。しかし翌20年、新型コロナウイルス感染症の影響やデュシタニ側の資金調達の難航により、ホテルブランドの決定が延期となり、未定のまま現在に至る。高級ホテルが入る予定の複合施設以外は整備が完了し、昨年11月26日、まちびらきの記念式典が盛大に行われた。

 市によると、うつのみやシンフォニーはこれまでホテル運営事業者となるホテルブランドなど数十社にアプローチし、数社から進出の意向を確認。市は本年度、進出意向のあるホテルブランドに対するうつのみやシンフォニーのヒアリングに市職員を同席させ、関与を強めている。現時点ではホテルブランド側の要望などを聞きながら施設整備計画案を作成し、協議を継続している。

 だが建設コストがネックとなり、高級ホテルの建設に必要な施設整備事業者が決まらない状況という。市担当者によると、ロシアのウクライナ侵攻や円安による燃料や資材の高騰で、建設コストの指標は15年比で約1.4倍に上昇。事業費の増大が収益性の悪化を招いている。

 全国的には有名観光地を多く抱え、インバウンド需要が見込まれる東京都や京都府、沖縄県などで高級ホテルの開業や計画が相次ぐ。市市街地整備課の石川弘(いしかわひろし)課長は「高級ホテル建設には、市の観光地としての認知も向上させる必要があるかもしれない」と分析する。

 「事業が完遂していない点で市に落ち度がある。市の資産を有効活用すべきだ」と6月議会の一般質問で取り上げた熊本和夫(くまもとかずお)市議は厳しく指摘する。事業計画では市の定期借地として収入が見込まれており「もう1年分得られていないことは損失。うつのみやシンフォニーは責任を全うすべきだ」と強調した。

© 株式会社下野新聞社