事故の後遺症などで記憶や行動に支障が出る「高次脳機能障害」の当事者の人生を描いた演劇とワークショップが11月22日、福井県の福井市春山小学校で上演された。演劇のモデルで、18歳で交通事故に遭い脳に重い障害を負った黒田真史さん(46)=東京都=も参加。演劇を通して4年生の54人に「未来をよくするために今を頑張ろう」と、前向きに生きることの大切さを伝えた。
東京・世田谷パブリックシアターが、文化庁のユニバーサル公演事業として上演。2024年1月までに1都4県の10小中学校で行う。
黒田さんは事故で脳の右半分を損傷。3カ月半、意識不明だった。現在、動くのは右手の親指だけで、声も出せない。
将来を悲観したこともあったが「できることを積み重ねよう」と考えるようになった。電動車いすを使い、一人で買い物に行き、スマートフォンのメモ機能で店員とやりとりした。介護タクシーや飛行機を使って旅行にも行った。
演劇では、黒田さん役の俳優が「私は人生を楽しんでいる。次は沖縄に行くぞ」と、黒田さんの思いを代弁した。
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演劇後のワークショップでは、児童が店員役になり、黒田さん本人と実際にやりとりした。「何がほしいですか」と聞くと、黒田さんはスマートフォンに「牛乳が欲しい」などと打ち込んだ。
打ち込む際には親指が動かなくなり、付き添いの介護士が腕をマッサージする場面もあったが、児童たちは「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声をかけていた。
女子児童(9)は「障害がある人の苦労が分かってよかった」、別の女子児童(10)は「一人で買い物に行く勇気は素晴らしいと思った」と話していた。