佐世保港の取扱貨物量が低迷 コスト増がネックに 近隣港で取り引きケースも

取扱貨物量が低迷している佐世保港。物流拠点として利活用しやすい港になるか=佐世保市内

 佐世保港の取扱貨物量が低迷している。ピーク時と比べて約6割減。企業の経済活動の縮小に加え、港湾施設の機能不足で余儀なくされるコスト増がネックになっている。中には市内企業が近隣港で取り引きするケースもある。港と経済の活性化は直結しており、市は「他港はレベルが一つも二つも違う。コストを下げて同じ土俵に上がらないといけない」と危機感をあらわにし、対応策を検討している。

 市みなと振興・管理課によると取扱量は、鋼材や燃料といった輸出入や国内取引、離島航路のフェリー貨物などの合算で、2022年は198万トン。牛や豚、鳥の飼料となる穀物などが一定量あり、ここ5年間はほぼ横ばい。ただ、生活物資を運ぶフェリー貨物が全体の約3割を占め、経済の活性化に結び付いていない。
 佐世保港の取扱量は、10年前と比べると約150万トン減、最も多かった1991年からは約300万トン減と落ち込みが大きい。取扱量は公共事業の発注量や企業間の取引量に左右されやすく、九州電力相浦発電所の廃止や佐世保重工業の新造船事業の休止などによって鋼材や燃料の取扱量が減少。荷物を積んだトラックごと積み込める貨物船「RORO船」の航路変更なども影響している。
 市が特に課題として挙げるのが輸出の弱さだ。佐世保港の実績を見ると19年、20年はゼロ、21年も47トンしかない。近隣の長崎、唐津、伊万里各港と比べると最少。毎年15万トン以上の輸出がある伊万里とは比べようもない。
 苦戦する原因は、港湾施設の機能不足により荷役コストが増える点。貨物を載せたり降ろしたりする時に使う市所有の大型荷役機械は前畑地区にあるが汎用性がなく、貨物を仮置きするスペースもないことなどから穀物の輸入などにしか活用されていない。輸出する場合は荷役事業者がクレーンを用意し、その分が価格に転嫁されている。複数の貨物に対応可能な荷役機械を常備する近隣港に条件面でも価格面でも劣っている。
 この問題は市議会でも田中稔議員(自民党市民会議)が指摘し、取り引きが他港に流れていることを問題視。市内のある企業は、伊万里と唐津両港から機械部品を輸出しており「わざわざ運ばなければならず時間も無駄。佐世保から出すことができれば」とため息をつく。
 市長は「商港機能の活性化なくして市の経済的な発展はない」と早急に取り組むべき課題と位置付ける。港の役割は大きく、貨物の取り扱いが増えれば、港近くに事業所の増加や雇用の創出といった可能性が広がる。
 市は多目的な物流拠点を目指し、新たな取り扱いとして重量物に着目。国がカーボンニュートラルを推進するのに伴い、関連する部材やエネルギー用タンクなどの需要が今後見込まれる。既に取り扱いできるかどうかの問い合わせもあっており、同課は「物にしたいチャンス」と話す。前畑地区の既存設備に代えて、来年度の予算で多目的に対応できる大型荷役機械の導入を検討中で、港湾機能は他港に引けを取らないレベルになると期待される。

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