創刊60年の老舗小説誌に漫画作品245ページ一挙掲載 SNSで大反響の「画家とAI」芸術・AI・戦争を描く

創刊60年の老舗小説誌に漫画作品245ページが異例の掲載を果たした。発売中の講談社「小説現代」12月号に芸術・AI・戦争を描いた樺ユキ「画家とAI」全編が収録されている。

漫画配信サイト「モーニング・ツー・WEB」で連載された同作は、戦争の影が忍び寄る小さな国の若き画家・モーリスが新種の生物ノームと出会い、「やり方を見せれば、すぐに同じことができる」というノームの能力に感激するモーリスだが、次第に画家たちの仕事がノームに奪われていくことに直面する物語が展開される。

担当編集者の「モーニング」編集部の高橋正敏氏は「1作としては長大な245ページとなる本作。物語はAIを発想のきっかけに『戦中の祖国への行動とはどうあるべきか』『人間の美しさとは何か』というテーマへと繋がっていきます。複雑な構成とボリュームゆえ、発表の仕方を悩んでいた時、『小説現代』編集長に読んでいただき、文学を愛する方ほど時代性のある本作を受け入れてくれるのでは、というご意見をもらい、今回の掲載が決まりました(小説を楽しみにしている皆さま、本当にお目汚し失礼いたしました)。ネットでの発表後、幸運なことに、X(旧Twitter)では1000万以上のインプレッションを集めていますが、紙で読みたいという方からの声も根強く、今回の掲載で、そういった方々に届き、末長くお手元に置いていただいたら、これ以上の喜びはありません」とコメントを寄せた。

同12月号では、当初より小説現代長編新人賞受賞作の「隣人X」(著・パリュスあやこ)を原作とした、12月1日より公開となる映画の特集が予定されていた。惑星からの難民を受け入れることになった日本の近未来を舞台に、隣人との不安、軋轢、そして交流を描いた作品だ。

「小説現代」編集部は「一方『画家とAI』も、ウクライナやパレスチナで今も止まない戦争、クリエイターたちの間で議論を巻き起こす生成AIの問題などを彷彿とさせるような、『私たちは、隣人とどう向き合っていくべきか』を描いた作品だった。漫画を一読し強く胸を打たれ、この漫画が現在、電子媒体でしか読めないのならば、『小説現代』に掲載し、新しい読者の眼に触れさせたいと感じた」と説明した。「芸術、AI、戦争を圧倒的描写力で描く超大作をぜひ、その目でご覧ください」と呼びかけた。

(よろず~ニュース編集部)

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