〈いしかわ百万石文化祭2023〉「巨大百姓」栄華しのぶ 輪島の国重文・上時国家、時國家が特別公開

「時國家住宅」で食談議を楽しむ参加者=輪島市町野町

  ●食談議や講演会楽しむ

 一般公開を休止している輪島市町野町の「上時国家(かみときくにけ)住宅」と「時國家住宅」(いずれも国重要文化財)の特別公開が25日、2日間の日程で始まり、大納言平時忠の末裔が築き、豪壮な造りで知られる両住宅を一目見ようと県内外から見物客が訪れた。各家に伝わる古文書や民具の展示をはじめ、講演や食談議などの企画を通して、来場者は平家の栄華をしのんだ。

 国民文化祭(いしかわ百万石文化祭2023)に合わせて、市が両家の協力を得て実施した。

 上時国家では、公開講座で神奈川大の関口博巨准教授が講演。同家が農業のほか、製塩や廻船、林業など多角的な経営を行っていたとし「企業家的風貌を持つ巨大百姓だった」と紹介した。

 来場者は厚さ95センチ、高さ18メートルに及ぶ茅葺き屋根や、時忠の大納言の官職を表す金を施した「縁金折上格(ふちきんおりあげごう)天井」などを見学。県有形文化財の古文書なども特別展示された。

 時國家では、食器の展示や食談議が催され、代々伝わる朱塗りの御膳や九谷焼の器で山海の幸が振る舞われた。ミシュラン一つ星を獲得した地元の日本料理店「冨成」を営む冨成寿明さん(40)が、「時忠の食事」「町野川流域の食文化」をテーマに腕を振るった。

 茅葺き屋根などにデジタルアートを投影するイベントも行われた。東京から参加した50代女性は「両家の造りが立派で感銘を受けた。すてきな空間で食事もでき、当時にタイムスリップしたようだ」と話した。

 両家は長年、奥能登の観光の一翼を担ってきたが、近年は新型コロナなどの影響で入り込み客の減少が続き、上時国家は今年9月から、時國家は3年前から公開を休止している。

「上時国家住宅」で大納言の間を鑑賞する来場者=同町

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