金沢競馬に11歳の看板娘 戸板小・安田さん、日曜に

料理を運ぶ安田さん=金沢競馬場の不二家大食堂

  ●優しかった「じじ」の後継ぎ食堂手伝い

 金沢競馬場にある家族経営の不二家大食堂で、金沢市戸板小5年の安田望愛(のあ)さん(11)が昨年4月から毎週日曜日、手伝いをしている。祖父の東(あずま)邦男さんが体調を崩し、店に出られなくなったのがきっかけ。家族は復帰を願うも東さんは10月17日、65歳で亡くなった。悲しみが癒えぬ中、たった一人の孫の望愛さんは、「お客さんに優しく接していた『じじ』のようになりたい」と「日曜の看板娘」として食堂に立ち続ける。

  ●家族で切り盛り

 食堂は金沢競馬場のスタンド棟3階にあり、週2回の本場開催日に営業している。店主で東さんの長男恭平さん(42)、東さんの長女で望愛さんの母安田伊都香(いつか)さん(44)ら家族で切り盛りする。

 東さんは生前、「自分がどうなっても、お客さんに迷惑が掛からないように食堂の営業は続けてほしい」と家族に伝えていたという。東さんが亡くなった後も家族が団結して営業を続けている。

 3歳から競馬場に遊びに来ていた望愛さんは小学1年生の頃から、客に水を出すなどの簡単な手伝いをしていた。

 元店主の東さんはレジ打ちを担当しながら配膳もこなしていたが、昨年春ごろから病気のため働けなくなった。幼い頃から祖父の働きぶりを見てきた望愛さんは「少しでも役に立ちたい」と本格的に手伝うことにした。望愛さんは祖父と同じレジ打ちと配膳に加え、うどんなど麺類も作ったりしている。

 孫が自分の代わりに店を手伝っていることに、邦男さんは「申し訳ない」と話していたという。それでも望愛さんは「自分がやりたくてやっている」と手伝いを続けた。

 東さんは闘病中、食堂で働くことはできなかったが、競馬場には足を運び、望愛さんの働きぶりを気にしていた。望愛さんは「じじには『笑顔と接客が良くなったな』と言ってもらえた」と振り返る。

 伊都香さんは「手伝い始めたころは、人見知りもしていたけど、今では上手にコミュニケーションをとっていて、自分よりもお客さんのことを知っている」と娘の成長に目を細める。

  ●競馬見るのも大好き

 望愛さんは競馬を見るのも大好きで、手伝いの合間には、馬主だった東さんの馬や顔見知りの騎手の応援が欠かせない。食堂の営業が終わっても、帰るのは最終レースを見てからだ。

  ●「お客さんとおしゃべり楽しい」

 食堂では「お客さんとのおしゃべりが楽しい」と競走馬や騎手の話で盛り上がることも多い。望愛さんが不在の日は常連客から「寂しい」との声が上がるほど、食堂にとって欠かせない存在になっている。望愛さんは「将来はじじのように競馬に関わる仕事がしたい」と目を輝かせた。

金沢競馬のレース。場内の食堂には来場した多くのファンが足を運ぶ=今年3月

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