兵庫県外郭団体の造林事業、借金682億円 「破綻状態」、県民の負担避けられず

分収造林事業の今後について話し合われた兵庫県の有識者委員会=27日午後、県庁

 兵庫県は27日、外郭団体「ひょうご農林機構」が進める主要事業のうち、民有地で木を育て、成長後に売却して土地所有者と収益を分け合う分収造林事業について「破綻状態にある」と明らかにした。県は同事業の収束に向け、機構の体制見直しの検討に着手する。事業に伴う借金は682億円に膨らんでおり、債務整理には県の財政支援が不可避で、県民負担は避けられそうにない状況だ。

 分収造林事業は、2022年3月に公表された県の包括外部監査で、少なくとも現状で数十億円の債務超過に陥っている可能性が指摘された。存廃も含めた事業の在り方について早急な検討を求められ、県が設置した有識者委員会の中で、県幹部が明らかにした。

 同事業は高度成長期の住宅建材確保などを目的に、国策として1960年ごろにスタート。各地で事業を担う林業公社ができ、兵庫県では62年から始まった。現在は但馬や西播地域を中心に、計約2万ヘクタールでスギやヒノキを育てる。伐採できるのは植栽から50~80年後で、この間の資金は主に借金で調達し、売却益で返済する仕組み。

 県は2016年に公表した行財政構造改革プランで、同事業の2078年時点の収支を10億円の黒字と見込んでいた。だが、その後の木材価格の下落とコスト上昇に伴い事業の収支見通しは悪化。県は、将来的に約700億円の赤字に転落するなどの試算を示した上で「実質的に破綻状態に陥っている」と説明した。

 県は今後、有識者委の中に資金調達の経緯や債務処理について検討する部会を設置。同事業を収束させる方向で、機構の抜本的な見直しを進める。県民負担の軽減と森林管理の両面から事業を再考し、同機構が担う農業部門の分割再編か、林業部門を県営化する2案を比較検討していく。

 同事業を巡っては債務超過が各地で問題となり、京都や長野など14府県が事業主体の林業公社を解散している。(三宅晃貴)

© 株式会社神戸新聞社