【新NISA】は「成長投資枠」で一括投資が効果的って本当? 一括 vs 積立を解説

新NISAへの関心が高まってきていますが、巷では「成長投資枠」で「一括投資」をするのがもっとも効果的な投資方法だとの話もでているようです。今回は、よく質問される「一括vs積立」について解説します。


どの枠を使うのか?

「新NISAは成長投資枠の方が良いんですか?」

筆者は新NISAをテーマとした講演会によく登壇させていただきますが、会場からはこういった質問を頻繁にいただきます。なぜそう思ったのかを尋ねると「なんとなく成長しそうだから」と笑っておっしゃる方がほとんどです。

たしかに「積立投資枠」と「成長投資枠」を並べると、投資をするなら成長する方が良いだろうといったイメージを持ってしまう方も少なくないかも知れません。

このような質問に対し筆者は、「もし投資をこれからデビューされるのであれば、成長投資枠はご自身が成長してから利用されたら良いですよ」と答えるようにしています。ご自身が納得した方法で新NISAを利用されたら良いのですが、初めての投資で分からないなら「積立投資枠」からと考える方が良いでしょう。

投資初心者は一括投資? 積立投資?

また「成長投資枠に240万円一括で投資をする方が良いと聞いたのですがどうでしょうか?」という質問も少なくありません。例えば株式投資に明るく、研究した結果タイミングを見計らって240万円を一括投資というのも否定するつもりはありません。ただ、初めての方にはおすすめできません。

一括投資は、今後株価あるいは投資信託の基準価額が上がり続けるという前提に立てば、非常に魅力的です。投資を継続すればするほど複利の効果で資産が増えていくでしょう。

しかし、現実的には、右肩上がりの市場なんて起こりえません。例えば100万円で購入した投資信託があるとしましょう。ある時40%も一気に値下がりしたらどうなるでしょうか? 40万円値が下がるので手元の投資信託の評価は60万円になっています。

では、その投資信託が40%値上がりしたらどうでしょうか? 40%下がった後で40%上がるわけですから100万円に戻るのでしょうか?

答えは、60万円の40%なので24万円の値上がりとなり、現時点での値段は840,000円で元には戻っていません。このように一括投資は、上がれば天国ですが、下がれば地獄、なかなか元に戻ることさえ大変になります。

一方10万円ずつ10回に分けて積み立てたらどうでしょうか?

これも市場の変動によって結果が違うのでなんとも言えませんが、ご存じの通り定時定額で投資信託を購入すると、基準価額が上がった時は買える口数は少なく、基準価額が下がった時は買える口数が多くなり、結果的に一括投資よりも保有口数が多くなる可能性があります。

値段の変動は予測できませんが、できるだけ安い時にたくさん口数を購入するシステムが自動化されている積立投資だからこそ、効率的な投資信託の仕入れができるともいえます。

利益は値段x口数で計算しますから、たくさん口数を持っている方が儲けは出やすいとなります。どこまで行ってもタラレバの話なので、一括投資を否定するものではありませんが、やはり投資初心者なら積立でしょう。

投資のことを忘れるペースで継続することが重要

もうひとつ理由を挙げるとすれば、「メンタル」の問題もあります。一括で購入した場合、買った値段および口数は固定されます。したがって、投資家からすると値段の上がり下がりがどうしても気になってしまいます。

これは購入する際も同様で、一括投資を考える場合、「今日買うべきか?明日買うべきか?」とお札を握りしめたまま迷いに迷って結局行動が起こせないのもありがちです。投資をするべきタイミングを待って、何もしないまま1年、2年と時間ばかり経過するのであれば、1万円ずつでも積立投資を始めてしまった方が、気が付くと100万円に到達しているとなるかもしれません。

積立投資でも、最初のうちはたしかに前回より値段が高かった、安かったと思うかもしれませんが、投資回数が増えればその分「いくらで買ったのか」に対する意識は薄れていくのが自然です。そのうち、毎月の買い付けもルーチン化し、知らないうちに投資信託の購入が進んでいたということになりがちです。

おそらく投資初心者の場合、この状態が望ましい投資の姿ではないかと思います。何しろ資産形成は長期で臨むものです。最初に張り切りすぎて息切れしてはいけません。できるだけ長く、投資のことを忘れたくらいのペースで継続することが重要です。

「ほったらかし」の危険性

忘れたくらいで良いというと、「ほったらかしで良いんですね」と言われますが、それもちょっと違います。市場は変動し続けるのですから、ほったらかしで良いわけはありません。

例えば株に投資をしているのであれば、その企業の決算などまったくチェックしないまま「ほったらかし」はあり得ないでしょう。配当狙いだからとおっしゃる方もいらっしゃいますが、それでもやはり思った通りの配当が継続的に出せる会社なのかどうかは、適時確認しないといけないでしょう。個別銘柄の場合、その会社独自のリスクがあるからこそ、放置はできないといえるでしょう。

一方投資信託の場合は、適時ファンドマネージャーがメンテナンスをしてくれているので、そういう意味では「ほったらかし」も可能です。それでも、運用会社が発行するマンスリーレポートのチェックくらいは投資家として最低限必要なことだと思います。「ほったらかし」は「無関心」ではありません。

つまり巷でよく言われる「ほったらかし」というのは、そのくらいのゆったりした気持ちで投資に取り組んでくださいねという意味と解釈した方がよいでしょう。あまり神経質になって、しょっちゅう株価が気になって夜も眠れないという繊細なメンタルの持ち主は、やはり新NISAが始まるといっても投資は不向きと言わざるを得ないかもしれません。

投資でもっとも大切なこととは

最近いただく質問の傾向として、みなさん細かいところを気にしすぎだなと思うことがあります。動画サイトや書籍で勉強すればするほど、「戦略」を考えすぎている気がします。

しかし、もっとも大切なことは「始めること」です。そして「続けること」です。あまり頭でっかちになりすぎて、結果行動が起こせないなんてもっとも避けるべき事態ではないかと思います。投資においてベストな方法はないですし、仮にあったとしてもそれは人それぞれで異なります。

そうであれば、とりあえず始めてみる、そしてやりながら試行錯誤を繰り返し、自分なりの投資方法を見つけていくがよいのではないでしょうか? 何よりも継続が力、目標をもって臨みたいところです。

資産形成においては長期投資が基本ですが、それでも早い段階で「一回売ってみる」経験をするのも大事です。なぜならば売るときのメンタリティを実感しておかないと、本当に大きなお金を引き出すタイミングになった時になかなか決断できなくなってしまうからです。

そして何よりも、資産形成の目標を持つことが大切です。何のために投資をするのかを頭にいれておかないと、単純に残高だけが気になって行動を誤ってしまいます。上がれば、うれしくて売り、下がれば怖くなって売りを継続していては資産を築けません。勉強をして詳細な情報を手に入れることは素晴らしいことですが、「そもそもなんで投資をするんだっけ?」というところを大切にしましょう。

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