カズ、J1神戸初優勝は「誇り」 選手やサポーターへ祝福メッセージ 歴史積み重ね「アジアを代表するチームに」

神戸からの退団を表明したイニエスタに会うため、ノエビアスタジアム神戸を訪れた三浦知良=6月18日

 サッカーJリーグ1部(J1)でヴィッセル神戸が初優勝したことを受け、2001年から2005年夏まで4年半在籍した元日本代表FW三浦知良(56)=オリヴェイレンセ=が28日、現在プレーするポルトガルから祝福のメッセージを寄せた。(小川康介)

 カズのメッセージは以下の通り。

 おめでとうございます。素晴らしい優勝でした。努力が報われた瞬間は最高の気分だったでしょう。僕自身もヴィッセル神戸に関われた人間として、誇りに思います。

 チームとして優勝経験はありませんでしたが、大迫勇也選手、武藤嘉紀選手、酒井高徳選手、山口蛍選手といった日本代表やワールドカップ(W杯)を経験しているベテランがいるので、いけるだろうと思っていました。優勝する時、昇格する時もそうですが、負ける時は負けるんですよ。全勝はできません。ただ、ここで負けちゃいけないという時は負けないんです。そういう勝負強さがありました。

 武藤選手とはずっと連絡を取り合っていました。僕も神戸で背負った11番をつけたことについて、社交辞令だとは思いますけど「重みを感じます。責任を感じてやります」と言ってくれたのはうれしかったですね。MVP級の活躍じゃないですか。あれだけハードワークをして、点を取るだけでなく必死にディフェンスをしてね。優勝を決めた試合も脚がつっていたでしょ。吉田孝行監督が「大丈夫か?」って聞いたら、「大丈夫」って答えていましたもんね。他の選手もやらざるをえないですよね。

 個人的にLINEをやりとりする中で、神戸に全てをささげてプレーし、痛みや疲れは覚悟の上でやっているというのが文面から伝わってきました。大迫選手も昨年のW杯代表落選があって、「今年が勝負」と覚悟を決めてやっていたんだろうなというのが顔つきに出ていましたね。

 僕が神戸に移籍する前に永島昭浩さんの時代があり、ラウドルップ選手らも含め、ヴィッセルは元々、大物と呼ばれる選手が来るチームでした。経営難でクラブが消滅しそうになった時、三木谷浩史会長が故郷の神戸に対する思いで引き受け、20年近くたちます。僕がいたのは、その転換期です。

 当時は楽天という会社をよく知らなかったですし、どのぐらいの目標を持ってやっていくのかも分かりませんでした。不安もありましたが、三木谷さんが引き受けて一気に環境が変わりました。新しいクラブハウスもそうですし、グラウンドもそう。希望が大きかった。20年足らずで優勝できたというのは実は早いのかもしれないし、これだけ情熱を注ぎ続けるというのはなかなかできることではありません。

 世界には100年やっていても優勝できないチームはたくさんあります。ヴィッセルだって2度、J2に降格しています。僕がいた時ならイルハン選手、最近ではポドルスキ選手、イニエスタ選手ら大物を入れましたが、そういうことを繰り返しながら、いい時もあれば悪い時もあります。今のチームは、選手として神戸でプレーした吉田孝行監督や菅原智、北本久仁衛の両コーチが支えています。サッカーのクラブづくりの本質として、歴史を積み重ね、受け継ぐ、途切れないっていうことが大事だと思います。

 優勝はしましたが、Jリーグというのは本当に来年どうなるか分かりません。神戸だって昨年の夏は残留争いをしていたわけですからね。海外ではJリーグは混戦で競争力のある、面白いリーグだとうらやましがられています。来年も優勝できるという保証はどこにもありません。努力は続けていかなければならないのです。

 僕はイニエスタ選手が大好きです。夢のある、エンターテインメント性のある選手ですからね。神戸はバルサ化を脱却し、インテンシティー(強度)の高い、攻守の切り替えの早いサッカーに転換したことで結果を出したという記事を読みましたが、イニエスタ選手がいたから優勝につながった部分もあると思っています。クラブの方針がどうかは分かりませんが、再び彼のような大物を獲得し、日本の子どもたちに夢を広げてほしい。それができるクラブです。次の段階として、三木谷さんは大物獲得とタイトル獲得を両立できるクラブづくりを目指しているんじゃないかと思っています。

 サポーターのみなさん、おめでとうございます。あなたたちの力は本当に大きいし、降格した時のサポートが本当に大事でした。結果が出ない時期からずっと支えてきてくれました。チャンピオンチームのサポーターだということに誇りを持ち、ヴィッセル神戸を街の誇りだと思ってほしいですね。

 帰国して6月にアウェーのセレッソ大阪戦を見に行った時、僕がいた時とはサポーターの数も熱狂度も随分違うなと受け止めました。それだけクラブが成長したんだなと感じました。これを続けていって、関西を代表する、日本を代表する、アジアを代表するチームになってください。欧州でも南米でも「日本といえばヴィッセルだよね」と言ってもらえるクラブになることを目標としてやってほしいなと思っています。

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