75歳絵本作家デビュー 野々市の直喜さん 「挑戦する大切さ伝えたい」

絵本を出版する夢を実現させた直喜さん=野々市市若松町

  ●公募展で大賞、創作に励み 保育園に寄贈へ

 野々市市若松町の直喜(なおき)節子さん(75)は、絵本の公募展で大賞を射止めたことを機に創作に励み、29日までに絵本作家デビューを果たした。20代で漫画家を志しながら、結婚や仕事に追われ諦めていた。長年、自らの心に封印していた絵本作家の夢をかなえた直喜さんは刊行した絵本を野々市市内の全保育園・こども園計19施設に贈る考えで、絵本の魅力とともに、目標を持って頑張ることの大切さを子どもたちに伝える。

 直喜さんは幼い頃から絵を描くのが好きで、1993年に北國アマチュア美術展(北國新聞社主催)の洋画部門で入選するなど技量を発揮してきた。

 2021年に文芸社(東京)の公募展「えほん大賞」に応募すると、翌年に約3千点の中から「書籍化したい30作品」の一つに選ばれ、自信を得た。ただ、受賞作の「にこにこ ペペちゃん」は読み直すと内容に満足がいかず、絵本化を見送っていた。

 直喜さんはその後、体調を崩し、しばらく静養していたが、次第にチャンスを手放した後悔の念が強くなった。夢への思いが再燃し、今年8月に絵本の創作を再開し、1カ月かけて物語を仕上げた。

 題材にしたのは、梅雨に自宅庭で見た1匹のカエルである。汚れた色のカエルを毎日近くで見るうちに愛着を感じた。ピンクの花のそばにいたカエルを「ピンクちゃん」と名付けてかわいがり、カエルの物語を通じて、容姿に自信がなくても内面を美しくし、努力で未来を変えられることを伝えたという。

 文芸社の担当者に絵本化への熱意を伝えると、内容が評価されて出版が決まった。絵本「そのなはピンクちゃん」(A5判、20ページ)は今月15日に刊行され、直喜さんは「なおきせつこ」のペンネームを使った。

 絵本は野々市市内の全ての保育園、こども園に1施設当たり2冊ずつ寄贈する。直喜さんは「自分が好きなことを諦めずに継続することが大事。絵本を通じて子どもたちに挑戦する大切さを伝えたい」と話した。

そのなはピンクちゃんの表紙

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