北陸道で立ち往生…大雪の中、少女の胸に響いた優しさの和音 思い綴った作文で「小さな親切」文科大臣賞

「小さな親切」作文コンクールで文部科学大臣賞を受賞した矢賀部さん=11月29日、福井県敦賀市内

 第48回「小さな親切」作文コンクールの上位2番目の文部科学大臣賞に福井県敦賀市内の中学3年生、矢賀部光夏多(やかべ・ひなた)さんの「大雪の中の三日間」が輝いた。2021年の記録的大雪で車の大規模な立ち往生に巻き込まれたときに、多くの人の「思いやり」に触れた経験を「心の中にワクチンを接種したようなもの。一生涯忘れない」と表現した。

 ピアニストを目指す矢賀部さんは石川県金沢市でのオーディションを終え、母親の運転する車に乗って北陸自動車道で帰っていた。激しく雪が降り続き最大で約1500台が立ち往生した。

 作文では、雪で車に閉じ込められたときに大型トラックの運転手から「大丈夫? トラックの中で休んで良いよ」と声をかけられ「温かさのある声が嬉しかった」。何時間も歩いて調達してきたチョコレートを渡してくれた人の「頑張ろう。生きて帰ろう」の言葉には「涙が溢れた」と振り返る。

 励まし続けてくれた友人もおり「大雪の3日間、白と黒の世界で正気を保っていられたのは『人とのつながり』があったからだと思う」とした。

 22年の全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ部門中学1年の部優勝やチェコ名門のヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団との共演などの実績を重ねてきた矢賀部さん。高校進学を控え「私は音楽家を目指し歩き出すが、感謝しながらステージに立ちたい。それが『思いやり』というワクチンを持つ私の使命なのだ」と結んだ。

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 敦賀市役所で11月29日、受賞報告した矢賀部さんは「たくさんの方からいただいた親切で温かい気持ちになれた。音楽を通して感謝の気持ちを届けたい」と話した。

 同コンクールは「小さな親切」運動本部(東京)が主催。子どもたちに人を思いやる心や言葉について考えてもらおうと毎年作品を募っている。今回は全国の小中学生から2万7769作品の応募があり、130の入賞・入選作品が選ばれた。県内からはほかに8人が入賞した。

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