洲本市の隠蔽体質にメス、閉ざされた館で何が ふるさと納税基準違反で百条委 議員ら「うみを出す意味でも必要」

市議会議場で行われた百条委員会=洲本市役所

 9月27日午後。兵庫県洲本市役所6階の委員会室は張りつめた空気に包まれていた。

 会派代表の議員6人が集まっていた。小野章二議員が口火を切った。「地方自治法100条に基づく調査特別委員会も視野に、設置を検討するべきだ」

 間髪おかずに間森和生議員が発言した。「きちんと調査権を持って理解を進めるべき」。「市の隠蔽(いんぺい)体質は続いている。うみを出す意味でも設置は必要だ」と久保哲二議員が続けた。

 異議を唱える議員はいなかった。市議会ふるさと納税問題調査特別委員会(木戸隆一郎委員長)で「百条委員会」設置が決まった。

 市がふるさと納税の基準違反で国から制度参加を取り消されたことを受け、同市議会で百条委が初めて提案されたのは昨年12月。ただ当時、市が設けた専門家による第三者委員会の調査は始まったばかりで、問題点ははっきりしていなかった。「動きを見守ろう」と機運は高まらなかった。

 一方で「百条委ができないなら」と刑事告発を検討する議員もいた。

 舞台裏で何度も調整を重ね、ようやく設置にこぎ着けた。

■問題発覚1年半、ようやく本格追及始動

 同特別委ができたのは昨年3月。ふるさと納税返礼品の「洲本温泉利用券」を巡り、市の手数料の取り扱いに疑義が生じたため、調べることが目的だった。

 しかし同5月、返礼品は寄付額の3割までとする基準に対し違反が発覚し、市は国からふるさと納税制度参加を取り消された。

 同9月、弁護士ら4人でつくる第三者調査委が発足し、今年9月に最終報告書を公表。元男性担当課長(退職)による手続きの不備や公文書偽造などの問題を指摘した。

 そうした流れを受け、特別委は「ここで調査できる範囲を超えた」と判断。10月19日、同市議会初の百条委が全会一致で発足した。

 百条委は通常の特別委よりも強い権限を持つ。関係者の出頭と証言、記録の提出を求めることができ、正当な理由なくそれらを拒んだ場合は、罰金や禁錮刑が科せられる。証人らへの質問は事前に届ける。

 最大の目的は、ふるさと納税担当だった元課長を証人として呼び、さまざまな事実関係をただすこと。

 問題発覚から約1年半。ようやく市議会による追及が本格始動した。

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 洲本市のふるさと納税問題について百条委員会で調査が始まった。これまでの調査内容を振り返り、市や市議会の動きを追いながら問題の背景をひもとく。(荻野俊太郎)

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