創業280年を迎えた老舗温泉旅館「松楓荘(しょうふうそう)」を経営する岩手県八幡平市松尾寄木の松川温泉(資本金1500万円、高橋晟社長)は事業を停止し、破産申請の準備に入った。東京商工リサーチ盛岡支店によると、負債総額は約6千万円。秘湯として全国から人気を集めたが、新型コロナウイルス禍で経営状況が悪化した。
2013年秋の台風18号の豪雨で1階が浸水し、温泉に泥が入り込むなど大きな被害を受けたが復活。営業を続けていたが、コロナの感染拡大で20年3月ごろから客足が鈍り、同4月から約40日間の休業を余儀なくされた。
厳しい経営が続き、賃金の未払いで従業員が退職。老朽化などで壊れたつり橋や施設が補修できなくなるほど資金繰りが悪化し、サービス低下でさらに客足が遠のく悪循環に陥った。2000年代前半は1億円以上の売り上げを計上したが、22年12月期の売上高は2400万円まで減少した。