政治家スキャンダル「身内からリーク」のウラに“濃密”人間関係? 知られざる「議員と秘書」の“相性問題”とは

ほとんどの議員事務所は“中小零細企業”のようなものだという(弁護士JP編集部)

税金の滞納を繰り返していたとして、先月13日に財務副大臣を辞任した神田憲次氏。税金滞納はさることながら、パーティー券が売れずに怒鳴り散らす、人格否定をしてくるなど、元秘書ら周辺の人たちから続々と明かされた“素顔”も注目を集めた。

一部報道では、議員秘書の間で出回っている「ブラックリスト」(紹介してはいけない議員のリスト)に名前が載っていたとも言われているが、実際、秘書たちから嫌われてしまう議員は数多くいるものなのだろうか。

「秘書に嫌われる議員」とは

神田氏のように、秘書など身内に対して横暴な振る舞いをする議員について「残念ながら、いないとは言えません」と話すのは、議員法務(政治家向けの法務サービス)に携わる三葛敦志弁護士。自身も、東京・国分寺市の市議会議員として10年、国会議員秘書として10年の政界キャリアを持っている。

「一般的な感覚と同じく、モラハラ、セクハラ、暴力などの問題がある議員は秘書に嫌われやすいと思います。あとは、給料などの金払いが悪い議員も不満が出やすいですね。

ただし議員に何か問題があったとしても、最終的には有権者に選ばれれば(=選挙で当選すれば)それで“良し”となってしまう風潮(いわゆる『みそぎが済んだ』として)が、いいか悪いかは別としてあることも事実です」(同前)

議員事務所は“中小零細企業”?

このような、秘書からの“低評価”は、単に議員の人間性に問題があるケースだけではないという。

「議員事務所は基本的に“中小零細企業”のようなもので、事務所スタッフは多くて十数人程度、20人もいるようなところはそうそうありません。つまり人間関係が非常に濃く、さらには勤務形態も一般的な企業とはまったく違うことから、その議員や事務所との“相性”に大きく左右されるのです」(三葛弁護士)

秘書は議員活動に欠かせない存在だが…(Fast&Slow / PIXTA)

三葛弁護士が議員秘書時代、「あそこは短期間で人が辞めている」と聞いていた事務所でも、あるときたまたま“うまくはまる”秘書が見つかり、長年定着したケースもあるという。

「秘書の中には『自分も将来は議員に』という野心を持って、修行のつもりでその議員のもとで働いている人も少なくありません。どういう目的で秘書をやっているのかによって、同じ議員のふるまいに対しても受け止め方が異なり、なかなか一般論では語れない部分があります。

他にも、給料への不満、『他の秘書ばかりえこひいきされている』との腹いせ、自分が選挙に出させてもらえないことへの恨みなど、不満の原因はさまざま考えられると思います」(同前)

秘書から「週刊誌にリーク」されないためには…

前述のように、秘書の受け止め方はその議員や事務所との“相性”に大きく左右されるため、議員にとっては「秘書をどう選ぶか」が非常に重要になってくるという。

「一般的には、周辺の人たちからの紹介や口コミで採用することが多いですが、見極めるべきは、その人が『信頼できる人か』『守秘義務が担保できるのか』ということです。

議員秘書の適性があるか、その議員や事務所との相性が良いかはもちろん、万が一秘書が重大なミスをしたり、裏切るようなこと(名簿の流出やお金の持ち逃げなど)をしたとしても、それは議員自身の『管理監督責任』が問われることになります。いわば“恥をさらす”ことになるため、こういったことが起きた場合に泣き寝入りせざるを得ないことも少なくありません」(三葛弁護士)

この他、週刊誌へリークされるリスクなど、議員には不安がつきものだ。三葛弁護士が担当する議員法務は、議員が本業(議会活動や選挙運動など)以外の“足回り”でつまずかないよう、法的な観点からサポートしているという。

「議員にはえりを正さなければいけない部分がある一方で、単にそのえりを正し続けることだけに注力して、本業がおろそかになっては意味がありません。

予防的に足回りを整えていくことはもちろん、問題があったときにうまく処理をしたり、どうしても処理しきれない場合には、身の処し方のアドバイスをするのも議員法務の役割のひとつだと思っています」(同前)

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