インフル急拡大で「警報」 医療逼迫の懸念も 長崎大学病院・森内教授、対策呼びかけ

森内浩幸教授

 長崎県は5季ぶりとなるインフルエンザ流行警報を11月30日に出した。2007年以降2番目に早い警報発令で感染者の約8割は10代以下だ。感染症に詳しい長崎大学病院の森内浩幸教授(小児科)は「この1、2週間、休日当番の小児科の中には百数十人の患者が押し寄せているところもある」とし、医療提供体制の維持のためにも感染対策や子どもが服用できる解熱剤の常備などを呼びかける。
 県が定点把握している70の医療機関で11月20~26日に3057人が感染。1医療機関当たりの報告数は警報レベルの30人を超え、43.67人。前週の約1.5倍に増えた。
 今後の流行について森内教授は「集団免疫は十分にできていないはずなので、まだ広がる余地はあると思う」とし、急激な感染拡大による医療逼迫(ひっぱく)を懸念。「まともな医療を受けられなくなると、助かるはずの患者さんが助からないということになりかねない」と、拡大のペースを緩やかにして医療提供体制を守る必要性を訴える。
 休日や夜間診療に患者が押し寄せている状況について「心配なのはよく分かるが、(診療所の)限界を超えている。患者さんにとっても体調が悪い状況で何時間も待つのはつらい。日ごろ健康な人なら家で横になっていた方がいいと思う。普段から子ども用の解熱剤なども常備し、夜中や休日に医療機関に駆け込むというのはしない方がいい」と冷静な判断を呼びかける。
 一方で「いつもの様子と違う場合は必ず医療機関に行ってほしい。こうした緊急性の高い患者がすぐに診察を受けられるためにも協力を」と述べた。
 治療薬も緊急事態だ。「子ども用の粉薬は既に不足している」とし、薬局によっては大人用のカプセルの中身を出して対応している状況という。
 感染対策については「飛沫(ひまつ)で感染するので、できるだけ人混みを避け、人と人の距離が近いところで話すような場面ではマスクを着用すること。部屋の換気も大事だ」とした。さらに「(発熱やせきなどの)症状があれば人と会わないことも重要だ。『なかなか仕事を休めない』『急に子どもを休ませられない』という人もいると思うが、できるだけ外出を控えてほしい」と話した。

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