マドリー以外、全滅した…/原ゆみこのマドリッド

[写真:©Atlético de Madrid]

「ここまで悲惨な週末も珍しい」そんな風に私が嘆いていたのは月曜日、前夜の悪夢はまだ覚めていなかったものの、結局のところ、先週末、マドリッド勢で勝ったのはレアル・マドリーだけだったのに気づいた時のことでした。いやあ、それでも幸か不幸か、今週はコパ・デル・レイ2回戦がミッドウィークに開催。1月のスペイン・スーパーカップ出場により、このラウンドも免除されているマドリーとアトレティコ以外、1部と2部の弟分4チームは敗戦の悔しさに浸っている暇もなく、すぐさま頭を切り替えないといけないんですけどね。

ええ、早くも火曜にはヘタフェが中3日で、1回戦で2部のサラゴサを破ったアトセネタ(RFEF3部/実質5部)と、水曜にはラージョが同じく中3日でジェルカーノ(RFEF2部/実質4部)と対戦。その12月6日の憲法記念日には2部の弟分、アルコルコンも同じ正午から、こちらはサント・ドミンゴにカルタヘナを迎え、同じカテゴリー同士の生き残りを懸けた試合に挑むことになりますが、何せ、彼らはリーガでここ4試合白星がなく、順位も降格圏の21位に低迷していますからね。せっかくRFEF1部(実質3部)から、1年で最短Uターンを果たしたばかりのアルコルコンの優先順位がどこにあるかは明らかですが、木曜にほんの10日程前に対戦し、ブタルケで2-2と引分けたばかりのラシン・フェロルと当たるレガネスも最近はあまり余裕がないんですよ。

というのも未だに2位と勝ち点4差で2部の首位に立ってはいるものの、前節はサラゴサに1-0で負けてしまい、ここ3試合白星なしとなってしまったからですが、果たしてボルハ・ヒメネス監督の考えは如何に。それでもいい形で勝って、いよいよ、兄貴分2チームとバルサ、オサスナが加わる年明け最初の週末にセットアップされている32強対決に進むことができれば、またチームに勢いが戻ってくるかもしれませんからね。となると、この1週間、じくじくした思いを抱えていないといけないのはアトレティコだけになってしまいますが…まあ、それは自業自得ってもんです。

そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢1部チームの試合がどうだったか、お伝えしておかないと。15節の先陣を切って、金曜にカナリア諸島でラス・パルマスと対戦したボルダラス監督のチームは、いやあ、前半9分早々、負傷のカルモナに代わって先発したオスカル・ロドリゲスがアラウホに激しいタックルをかけ、レッドカードをゲット。VAR(ビデオ審判)注進でモニターチェックをした主審がイエローカードに変えてくれた時には、ツイてると思ったんですけどね。それがまさか、43分にはアラウホがヘッドで先制点を決めて、リベンジしたかと思いきや、1-0で始まった後半1分にはカードで真逆の目が出てしまったから、さあ大変!

そう、今度はアンデレテがロイオディスを後ろから蹴って、イエローカードをもらったんですが、モニターチェックでレッドカードになってしまったため、ヘタフェは後半丸々、1人少ない状態で戦う破目に。これがホームゲームなら、ええ、先日は10人でカディスに勝っていましたからね。さすが今季はまだアウェイで未勝利とあって、何とか後半ロスタイムまでは追加点を奪われずに済んだものの、最後はマルビンのラストパスをクリスティアン・エレーラに決められて、2-0で負けてしまいましたっけ。

いやまあ、リーガの次戦はまた今週金曜日、バレンシアをコリセウムに迎えることになりますし、きっぱり1部残留だけを目指すのであれば、ヘタフェはホームで勝利を重ねていくだけで大丈夫だと思いますけどね。できれば、アウェイでももう少し野心的になって、ヨーロッパの大会出場を夢見られる位置にいてもらいたいというのが、ファンの本音じゃないでしょうか。

そして土曜はまず、サン・マメスでラージョがアスレティックに挑んだんですが、丁度、私がサンティアゴ・ベルナベウに出かける前にGol(スペインのスポーツ専門オープンチャンネル)で中継が始まったため、身支度しながら、前半を見ていたところ、15分にはオフサイドでゴールを認められなかったグルセタが23分には撃ち直し。サンセットのラストパスを決めて、先制されてしまったんですが、まさか1-0で始まった後半があそこまで散々なことになるとは。

ええ、スマホで試合を追いながら、私がメトロの駅に向かっていたところ、2分にはイニャキ・ウィリアムスのシュートがエスピーノに当たって、オウンゴールになってしまったかと思えば、フランシスコ監督がバレンティン、ウナイ・ロペス、イシをキケ・ペレス、トレホ、デ・フルートスへと3人一気代えした後の19分、今度はイニャキ・ウィリアムスが自身のシュートを直接決めて、アスレティックは3点目をゲット。ヘタフェと違い、今季はむしろアウェイの方が強かったラージョは一体、どこに行ったのかといった有り様で、敵の猛攻に手も足も出ないのに呆れて果て、3-0になった時点で私も見るのを止めてしまったんですが、それで正解だったよう。

実際、ベルナベウに着いた頃には金曜に2027年までの契約延長を発表したウィリアムス弟、ニコのお祝いゴールも加わって、4-0で終了していましたしね。ここまでgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)されてしまうと、もうキッパリ忘れて、次節、来週月曜にエスタディオ・バジェカスにセルタを迎える試合で今季ホーム2勝目を目指した方がずっと生産的ではありますが、それにしても心配なのはここ3試合、RdT(ラウール・デ・トマス)にまったく出番がないこと。今季はレンタルでなく、アトレティコから完全移籍となったカメージョも相変わらず、ゴールを挙げられていませんし、ヘタフェと勝ち点が同じラージョも地道に1部残留の目標を掲げるしかないのでしょうか。

そしていよいよ、ベルナベウでグラナダ戦が始まったんですが、何せ、土曜の早い時間の試合ではベテランのエース、ストゥアーニが発奮して、バレンシアに終盤、2-1とジローナが逆転勝ちをしていましたからね。勝ち点差3で2位に落ちていたマドリーだけに負傷欠場者7人と戦力が大幅減退していようが、勝たない訳にはいかなかったんですが、先に不幸なアクシデントが起きたのは先週、1部昇格の功労者、パコ・ロペス監督を解任。ヨーロッパで初めて指揮を執るウルグアイ人のアレクサンドル・メディーナ新監督がデビューしたグラナダの方で、開始から6分にはせっかく上役が代わって、先発に抜擢されたGKラウール・フェルナンデスが背中を痛め、プレー続行不可となってしまうことに。

結局、早々にこれまで正GKだったアンドレ・フェレイラがピッチに入ることになったんですが、26分にクロースとのワンツーから、エリアに入ったブライムに先制点を決められてしまったのは別にそのせいではなかったかと。実際、昨季までの3年間、ミランでレンタル修行してきたFWはビニシウスが代表戦でケガして帰って来た穴をしっかり埋めていて、paron(パロン/リーガの停止期間)明けのカディス戦こそ、試合直前に腹痛を起こし、出られなかったものの、先発したここ2試合で1得点1アシスト。いえ、当人は「El balón que me mete Kroos es increíble/エル・バロン・ケ・メ・メテ・クロース・エス・インクレイブレ(クロースがボクによこしたボールは信じられないぐらい良かった)」とゴールを入れた後、彼のサッカーシューズを磨くパフォーマンスまでしていたんですけどね。

それもクロースに言わせると、「El pase sólo es bueno si marcas gol. El pase no fue tan spectacular/エル・パセ・ソロ・エス・ブエノ・シー・マルカス・ゴル。エル・パセ・ノー・フエ・タン・エスペクタクラル(ゴールになる時だけがいいパスなんだ。あのパスはそれ程、スペクタクルなものではなかった)」そうで、これはブライムのお手柄ということになりますが、対照的にこの日、珍しくも違いを見せられなかったのはベリンガム。抗議で早々にイエローカードをもらったかと思えば、絶好のシュート機会も外しえしまい、ハーフタイム近くにはイグナシ・ミケールにエリア内で倒されながら、ペナルティを取ってもらえずと、まったくツキがありませんでしたが、大丈夫。

後半12分にも彼はブライムからパスをゴール前でもらいながら、シュートを敵GKに弾かれてしまったんですが、そこに駆けつけたのはロドリゴ。ビニシウスが欠場となってから、その左サイドのアタッカーの位置を受け継ぎ、得点を増やしていたブラジル代表の同僚ですが、この時はアンチェロッティ監督も「今日は左にいる時だけゴールを入れるという俗説を否定した。Lo puse por la derecha porque pensaba que iba a tener más espacio/ロ・プセ・ポル・ラ・デレッチャ・ポルケ・ペンサバ・ケ・イバ・ア・テネール・マス・エスパシオ(よりスペースがあると思って、私は彼を右に置いたからね)」と言っていた通り、ゴールの右側から、マドリーの2点目を入れてくれることに。

正直、現在、降格圏の19位にいるグラナダには2-0のリードで十分で、ええ、たまにボールを持った時にも彼らはゆっくり外縁でパスを回していて、GKルーニンにほとんど近づいて来ませんでしたしね。これ以上、負傷者を増やしたくないマドリーも残りの時間は程々にやっていたんですが、それにしても前半、ふくらはぎに違和感を覚え、用心のためにハーフタイムでルーカス・バスケスと交代。そのカルバハルが月曜の検査の結果、肉離れで全治3~4週になってしまうとは、マドリーの負傷禍は一体、いつになったら終わる?

いえまあ、すでにGKケパはグラナダ戦からベンチに入っており、カディス戦で筋肉痛を起こしたモドリッチも土曜のベティス戦には戻ってこれそうなんですけどね。当然ながら、今週ミッドウィークの試合がないマドリーは続く2日間を連休にして、フル稼働している選手たちを労っていましたが、月曜にはベリンガムがゴールデンボーイ賞の表彰式でトリノまで出張するなんてことも。20才と若い彼ですが、まだ脱臼した肩のプロテクターも取れていませんし、今週末からクリスマス休暇までの2週間はノンストップで4試合控えているため、休養日にはしっかり体を休めてもらいたいものですね。

え、それより私が悪夢と評した日曜のバルサvsアトレティコ戦はどうだったのかって?まあ、イロイロ理由はあるんですが、とにかく出足が最悪でねえ。開始から16分頃まで、鬼のようにバルサのチャンスが続き、それもレバンドフスキやラフィーニャがシュートを勝手に失敗してくれたため、大量失点を免れる始末だったんですが、もしやアトレティコのお家芸、眠ったままピッチに入るがよりによって、この大事な試合で発現してしまった?

実際、後でGKオブラクも「La primera parte la hemos tirado/ラ・プリメーラ・パルテ・ラ・エモス・ティラード(前半をウチは捨ててしまった)。何でかはわからないけど、元々、最初から勝ちに行く予定だったのに、誰もボールを受けたがらないし、プレーもしたがらなかった」と言っていたように、3度とパスが繋がらず、今季初めて見る酷い状態だったんですが、更なる最悪が訪れたのは29分。ペドリのスルーパスを受けたジョアン・フェリックスをモリーナがあっさり逃し、ゴール前左から、オブラクの頭の上を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)で決められて、広告ボードの上で大々的に祝われてしまうって、そんな当人の台本通りの展開があっていいんでしょうか。

おかげでその後はヒメネス、ビッツェル、エルモーソらが、アトレティコ時代とは人が変わったように攻守に頻繁に顔を出すジョアンにガンガン、ファールをかけまくり、それこそ、もしかして彼、よっぽどチームメートから嫌われていたんじゃないかと誤解してしまう程だったんですけどね。ええ、「Me pegaste, me pegaste/メ・ペガステ(ボクを蹴ったな)」と抗議する彼をヒメネスが、「Quieres pelear o qué?/キエレス・ペレアル・オオ・ケ(やりたいのか、ええ?)」と威嚇して、コケに「Ya está, tranquilo/ジャー・エスタ、トランキーロ(もういい、落ち着け)。あいつは2枚目のイエローカードを誘発しようとしているんだ」と宥められている映像などもあったんですが、まったくもう。

幸い試合はそのまま、1-0で折り返し、ロッカールームで頭を冷やしたアトレティコはリケルメ、ヒメネス、モリーナをサムエル・リノ、コレア、アスピリクエタに交代して後半をスタート。それがまた、初っ端から、昨季後半にはチェルシーで一緒だったアスピリクエタがジョアンに回し蹴りして、イエローカードを受けていたため、心配したんですけどね。改心はあったか、反撃をするようになったとはいえ、逆の立場で出戻り組のグリーズマンやここ数試合、ゴール運に見放されているモラタがシュートを決めてくれないのではどうしようもありませんって。先日のCLフェイエノールト戦のように敵がオウンゴールで助けてくれることもなく、終盤、交代で入ったメンフィス・デパイのFKやロスタイムにコレアが放ったエリア内シュートもGKイニャキ・ペーニャにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたため、そのまま1-0で敗戦です。

いえ、アトレティコがバルサにアウェイで勝てないのは2006年以来、24試合連続なため、全然、珍しいことじゃないんですけどね。それがカンプ・ノウから、モンジュイックのオリンピック・スタジアムになっても変わらないとなると、もう方角が悪いとしか言いようがない?シメオネ監督も「Alguna vez nos tocará algo importante aquí/アルグーナ・ベス・ノス・トカラ・アルゴ・インポルタンテ・アキー(いつかはウチに何か大事なことがここで起きるだろう)。2014年に引分けでリーガ優勝した時みたいに」と過去の栄光を引き合いに出して、自らを慰めていましたが、これで今年最後、23日にメトロポリターノで開催される延期されていた4節のセビージャ戦が万が一の保険ではなく、勝利がマストの試合になったのも確か。

何せ、バルサに負けて4位に落ちてしまったのはとにかく、おかげで首位の2チームとの差が勝ち点7に広がってしまいましたからね。ついでに言うと、ラージョを一蹴した好調アスレティックも勝ち点差3の5位で迫っていて、うっかり油断をすると、CL出場圏外で年を越すことになるからですが、ちなみにアトレティコは次節、日曜にホームで最下位アルメリアと対戦。年内のリーガ戦、アウェイはそのアスレティックとの1試合だけで、他の3試合を18連勝中のメトロポリターノでプレーできるのは有難いと言っても、リーガでトップを目指すにはホント、内弁慶なだけじゃダメですよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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