庄川の松、大量伐採 松川除、倒木の危険性

樹木診断を行う樹木医=10月、砺波市の弁財天公園付近

  ●松枯れで年度内に二十数本

 砺波市の庄川沿いの堤防に植えられた松の木などがまとまって枯れた状態になっている問題で、国土交通省富山河川国道事務所は5日までに、倒木の危険性があるとして樹木二十数本を年度内に伐採することを決めた。同事務所によると、これだけ大量の樹木を伐採するのは近年になく異例という。松の木に感染症が広がったのが原因で、今夏の異常気象が及ぼした影響もあるとみられる。

 伐採するのは、雄神橋上流の弁財天社西側の堤防「松川除(まつがいけ)・前堰(まえぜき)」に植えられている松20本と桜2本の計22本、同橋下流の堤防沿いの樹木の一部となる。

 富山河川国道事務所によると、「マツ材線虫病」と呼ばれる感染症が広がり、病害虫が侵入した木の水分を吸い上げる力が弱ったのが原因とされる。今夏の猛暑の高温と小雨の影響もあり枯死に至ったとみられる。

  ●藩政期の名残とどめる堤防

 現場は藩政期に植えられた由緒がある「松川除(まつかわよけ)」の名残をとどめ、松の古木や桜並木などがある。枯死した樹木は風雪による倒木や落枝の可能性があるとして伐採を決めた。

 富山河川国道事務所は10月中旬に砺波市の庄川合口ダム付近-同市中野の庄川上流の堤防沿い約3キロに植えられた樹木約300本の診断調査を7年ぶりに実施。日本樹木医会富山県支部の協力を得て、枯れ枝や空洞などがないか調べていた。

 砺波市のボランティアグループ「砺波カイニョ倶楽部」と「カイニョお手入れ支援隊」のメンバーが行った調査でも過去50年間で一度もない深刻な松枯れとして、早期の伐採と枯死の原因究明を求めていた。

 富山河川国道事務所の担当者は「樹木が枯れて危険なため、堤防や利用者の安全を考慮して伐採を決めた」と話した。

 ★マツ材線虫病 マツ科の樹木に発生する感染症。マツザイセンチュウが木に侵入し、樹脂道などを破壊しながら増殖し、松を弱らせる。弱った松の樹皮下で卵からふ化して成虫となったマツノマダラカミキリがマツザイセンチュウを付けて枯れていない松に移り、媒介する。枯れた松は被害を防ぐため伐採、焼却する必要がある。

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