輪島塗の椀「里帰り」 射水の大楽寺所蔵の品、輪島市に贈る 北前船寄港地交流さらに

輪島塗の膳椀セットを提供する田村住職(右)=射水市立町

 国の有形文化財に登録されている射水市立町の浄土宗大楽寺は5日、江戸時代に作られた輪島塗の膳椀(わん)一式60セットを輪島市に無償提供した。寺がある射水市新湊地区と輪島市は江戸時代、北前船の寄港地として交流が盛んだった。田村晴彦住職は膳椀を輪島市で活用してもらうことにより、港町として歴史ある両地域の新たな交流につなげたい考えだ。

 膳椀セットは1862(文久2)年、当時の住職が購入した。膳やひら椀、汁椀などが12個の木箱に保管されている。江戸、明治時代には十夜法要の食事に使用されたという。寺に小学校の分校があった際は卒業式後の会食に使われた。北前船の帰港後には漁師の祝いの席にも並んだ。ただ近年は使用する機会がほとんどなかった。

 田村住職が、このまま漆器を保管していても意味がないと一念発起し、6月に輪島市側に連絡した。同市漆器振興戦略室の細川英邦室長が8月に漆器の状態などを確認し、提供を受けることにした。

  ●食育、イベントで活用

 5日は細川室長が大楽寺を訪れ、膳椀セットを輪島市に運んだ。持ち帰った膳椀一式は今後、使える物とひび割れで修復が必要な物に分け、修復が必要な漆器については若手職人が修復する。細川室長は「状態がよいので有効活用してきたい」と述べた。輪島市では園児らの食育やイベントなどで活用していく。

 田村住職は「輪島塗の提供を通し、漆器の発展と新たな交流につながればうれしい」と語った。

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