災害時「支援船団」に 富山高専の練習船若潮丸

老朽化が進む4代目の若潮丸。新造船の建造が決まった=射水市内

  ●新造、全国5校で連携

  ●物資輸送や給水活動想定

 文部科学省は今年度、富山高専の練習船「若潮丸」の新造船建造に着手する。新造船では大規模災害発生時に備え、物資輸送などのための支援機能を充実させる。過去には医師や看護師らが被災地に赴く際、災害で陸路が使えず高専の練習船を活用したこともある。全国にある商船系高専5校の練習船を共通仕様とし、災害時に連携して対応に当たる「支援船団」としての運用も視野に入れる。

  ●仕様を共通化

 航海士や機関士らを育てる富山高専商船学科では、生徒が船舶の運航や機関部の知識などについて学び、若潮丸に乗船して「海のスペシャリスト」を目指すべく実習を行っている。

 現在の若潮丸は4代目で、1995年に完成した。運用開始から28年が経過し、耐用年数とされる20年を超過して老朽化が進む。改正された船舶関連法令への対応も求められていることから更新する。文科省専門教育課によると、2年程度で建造する。

 新造船の総トン数は現行船の約1.6倍となる約370トンと大型化される。全長57メートル、幅11メートルで、定員は60人となる計画だ。これまで女性乗船者のためのスペースはなかったが、新たに女性居住区、設備を設ける。このほか、訓練用の最先端システムも導入する。

 建造に合わせて、練習船の災害支援機能の強化を図る。災害時の主な役割は、支援物資の輸送や給水活動、海難救助などが想定されることから、物資搭載スペースや積み降ろし用設備を備える。緊急時の衛生設備も確保する。

  ●日本海側の拠点

 全国には富山のほか、三重、広島、山口、愛媛県に商船系高専があり、それぞれ練習船を運用している。西日本の太平洋側の学校が多く、富山高専は東日本の日本海側の拠点となる。

 各船の仕様を共通化することで、支援活動などで連携を取りやすくする。災害発生時に早期に出動でき、機動性の高い船舶として運用できる見込み。海洋調査などでも共同で活動しやすくなり、文科省の担当者は「今後は高専の練習船の活躍がより期待される。各校の連携も大事になる」と話した。

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