県警に「連合捜査」部署 特殊詐欺壊滅へ全国一丸

 石川県警に来春、県内をはじめ全国で甚大な被害が生じている特殊詐欺を集中捜査するため、警視庁などに新設される「連合捜査」の担当部署が設置されることが5日、分かった。従来の捜査は事件が起きた地域の警察本部が権限を持つ「発生地主義」だったが、発生が石川県内ではない事件についても、県警が容疑者の摘発に必要な捜査に関与する。47都道府県警が一体となり特殊詐欺グループの壊滅を目指す。

  ●来春、新部隊にも2~4人出向

 2022年の全国の特殊詐欺被害は8年ぶりに増加し370億8千万円。今年も増加傾向が続いている。

 警察庁によると、24年4月、7都府県警に計約500人体制で特殊詐欺に対する新設部隊「連合捜査」を設立し、石川県など全国の警察本部にその担当部署を設ける。また新設部隊には、石川など道府県警から各2~4人が出向する。

 これまでの捜査は発生地主義が原則で、他県警から要請を受けてもATM防犯カメラの確認など初動に限られていた。警察庁はこの運用を見直し、特殊詐欺に関しては今後、都道府県警の枠を越えた体制で臨む。このため、石川県外で起きた事件についても、石川県警の担当部署が中心となって犯罪グループの特定に必要な捜査を進めるケースも出てくる。

 連合捜査は全国で起きた事件に関して各地の警察から捜査要請を受け、初動から摘発までの全体を担う。

 警察庁は13日、石川県警などの特殊詐欺捜査の担当課長らを集めた会議を開き、来春の新部隊の発足を踏まえ、全国警察が一丸となって摘発を推進するよう求める。

  ●「体制づくり進める」

 県警警務課の担当者は「特殊詐欺対策をはじめ必要な体制づくりを引き続き進めたい」としている。

  ●県内被害額1億9900万円/今年、10月末時点

 石川県内の今年の被害(10月末時点)は前年同期比27件増の95件、総額は約2100万円増の1億9900万円と増加。2021年はコロナ禍で、過去10年では最少の30件約2800万円だったが、昨年は82件約2億6500万円に急増した。

 1~3月、小松市の70代女性が「本日中に連絡ください」とスマホに届いたメッセージをきっかけに、石川県内で今年最高の被害額となる現金約3460万円をだまし取られた。

 女性が表示された番号に電話すると、「情報が流出している」と言われ、調査費用を皮切りに有料サイト未納料金、保険加入の返金補償などの名目で数十回にわたり送金した。

 特殊詐欺の手口は絶えず変化しており、昨年はウクライナ支援金名目でだまし取る手口が全国的にみられた。北陸新幹線金沢開業以降は首都圏に被害者を呼び出す「上京型」の手口が目立ち、コロナ禍ではワクチン接種予約名目などの電話が確認された。

 県警と県タクシー協会は5日、特殊詐欺被害防止に関する協定を締結。協会加盟のタクシー約1400台の運転手に水際での声掛けに協力を求めた。

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