上向いた読解力

 頭の体操をお一つ。〈メジャーリーグ選手のうち28%は米国以外の出身だが、その出身国はドミニカが最も多く35%である〉。これに合う円グラフを複数の中から選べ-という問題が、世界中の15歳が挑む学力調査で出されたことがある▲「米国以外は28%」の裏返し、つまり「米国出身の選手は72%」と示された円グラフを選べばよいのだが、「ドミニカ35%」が絡むとややこしい。日本の正答率は13%にとどまった▲昨年、81カ国・地域から参加した学習到達度の調査で、日本は「読解力」が前回(2018年)の15位から3位へとジャンプした。「科学的応用力」「数学的応用力」もトップ水準にある▲先の円グラフの出題は引っかけにも思えるのだが、「読み解く力」の低下は国語教育界に“激震”をもたらした。受験に記述式も取り入れ、パソコンでの解答にも慣れさせてきたという▲全国的には、例えば原発処理水の放出を巡って生徒に議論させる学校もある。話し合いや考える力が読解力に通じるのは道理だが、先生の負担が大きかったりして、たやすくはない▲もう一つ、四字熟語を完成させる頭の体操を。「用意○○」。読解力の向上は一朝一夕にはいかず「用意ドン」の勢いにはいささか遠い。こつこつと、息の長い「用意周到」しかないのだろう。

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