マダム・バタフライ役歌手・三浦環の写真 長崎県オペラ協会に寄贈

三浦環の写真と色紙を寄贈した松浦正朗さん(中央)まゆみさん夫妻。左は県オペラ協会の高木理事長=長崎新聞社

 大正から戦前にかけ、海外で長崎を舞台にしたオペラ「マダム・バタフライ」の主役として活躍したオペラ歌手・三浦環(1884~1946年)。その環が13年9月に医師の三浦政太郎と結婚式を挙げた時の写真などが、三浦の親戚から県オペラ協会に寄贈された。同協会の高木浩行理事長は「貴重な写真をありがたい。蝶々さんゆかりの地長崎で、演奏会会場などに写真を飾り、多くの人に紹介したい」と話している。
 環は東京音楽学校を卒業後、両親と出身地が同じ静岡県の政太郎と再婚。本場で声楽を学ぼうと14年に渡欧し、日本人として初めて「マダム・バタフライ」の主役を演じると一躍人気に。その後、米国に拠点を移して同役を演じ続け、同作の作曲家プッチーニは「最も理想的な蝶々さん」とたたえた。
 22年に一時帰国した際には長崎市で演奏会を開催。グラバー園には今も環の石像が立つ。
 今回寄贈したのは東京の歯科医師、松浦正朗さん(77)、まゆみさん(72)夫妻。静岡市で銀行員をしていた曾祖父が政太郎の叔父に当たり、結婚式の仲人も務めたという。環が無名の頃の写真のほか、海外で一世を風靡(ふうび)した後に、環が松浦家が営む旅館にあいさつに来た際に書いた色紙を祖母から松浦さんが受け継いでいた。
 このほど松浦さん夫妻が長崎市を訪れ、高木理事長に写真と色紙を手渡した。松浦さんは「結婚写真は静岡県掛川市の政太郎の自宅の庭で撮ったものではないか」と推測。「祖母にとって環さんは身近にいた大スター。写真と色紙を大事に保管していた」とし、「自分たちには子どもがいないので、どこかに譲ろうと思い立ち、県オペラ協会に連絡したところ快く受けてもらえ、ほっとしている」と語る。
 高木理事長は「2025年に本県で開催される国民文化祭でオペラ『蝶々夫人』を上演する計画を立てている。会場のロビーに拡大した写真と色紙を飾りたい」、松浦まゆみさんは「『蝶々夫人』を鑑賞したことがないので、その時は夫婦で長崎を訪れたい」と話した。

© 株式会社長崎新聞社