機密費発言を陳謝 知事「県民に心配かけた」

  ●県議、評価の一方「納得できない」

 東京五輪の招致活動で内閣官房報償費(機密費)を使ったとの発言を巡り、馳浩知事は6日の本会議で、「議員や県民の皆さまにご心配をおかけし、おわび申し上げる」と陳謝した。紐野義昭氏(自民)の代表質問に答えた。知事が機密費に関する自身の発言について県議会で言及したのは初めて。知事に近い議員からは評価する声もあったものの、従来と同じく詳細な説明はせず、「納得できない」と厳しい指摘もあった。

 「複数の事実誤認があることを私自身で確認したため、その日のうちに全面撤回した」。壇上に立った馳知事は答弁書を指先でなぞりながら丁寧に語った。

 五輪招致については国際オリンピック委員会(IOC)の倫理規定に沿って招致活動に取り組んだと説明。その上で「議員の指摘通り、批判を真摯(しんし)に受け止め、知事の職責を果たすべく、日々精進を重ねる」と述べた。

 質問した紐野氏は保守三つどもえとなった2022年の知事選で馳氏を推した一人で、「議会で聞かれれば『答えない』とはいかない」と機密費に関する発言を取り上げた。対する知事の答弁については「100%納得できる答えではないが、質問をはねつけるような態度を取らなかった点や、県民へのおわびは受け止めたい」と話した。

 馳派筆頭の福村章氏も「おわびと、答弁をしたことはいいのではないか。今後も質問や発言を通し、県議が注意を促してもいい」と述べた。

 一方、知事選で馳氏の対抗馬の応援に回った善田善彦氏は「答弁に誠意があまり感じられなかった」ときっぱり。8日に予定される自身の一般質問では当初、言動に注意を促すのみにとどめるつもりだったが、代表質問で踏み込んだ説明がなかったことから、答弁を求めることにした。

 当初不問としていた公明も支持者の声を受け、12月定例会で触れる方針に切り替えた。谷内律夫氏は「知事選で馳氏を応援した有権者は悲しんでいる。答弁は求めないが、慎重に対応するよう訴えたい」と険しい表情を浮かべた。

 第2会派未来石川の吉田修会長は知事から納得できる答えが得られなかったと批判した上で「全面撤回と繰り返し、このまま乗り切るつもりではないか。議会としてのチェック機能を果たさなければいけない」と強調した。

 共産の佐藤正幸氏は、馳知事が答弁の中で発言を撤回した経緯に関し「内容に複数の事実誤認があったことを自身で確認した」と述べたことに着目し、「複数の事実誤認が何なのかを追及する」と意気込んだ。

 本会議終了後、記者団の取材に応じた馳知事は「議会で質問があれば誠意を持ってお答えする。記者会見でも答える」と述べた。ただ、実際に機密費に関する問い掛けがあっても「全面撤回しているので発言には言及しない」など、これまでと同じ説明に終始した。

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