「年をとっても住み慣れた町で」 ボランティア団体発足、弁当配達サービス 諫早・小長井

配達サービスを利用し、弁当などを選ぶ女性たち=諫早市小長井町

 「年をとっても住み慣れた地域で元気に暮らしたい」-。諫早市内で唯一、過疎地域に指定され、高齢化が進む同市小長井町で11月、住民有志によるボランティア団体「こながい支えあいの会」(德永秋男会長)が発足した。広がる支え合いの現場を追った。
 市によると4月現在、小長井町に住む65歳以上の住民は約1900人で、町人口の42%を占める。高齢化率は10年前より14%上昇した一方、人口は約1300人減った。これを受け、2021年4月の新過疎法施行に伴い、同町は過疎地域に指定された。有利な財政支援策を背景に、移住者増加などが期待されている。
 同町は有明海沿岸から山間部までの広範囲に集落が点在。路線バスの便数は少なく、タクシー会社も人手不足などを理由に事実上撤退した。「(タクシーを)呼んでも来るまでに時間がかかる」という声のほか、通院や買い物などの移動支援を訴える声が根強い。
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 団塊世代の多くが75歳を迎える25年を前に、市は医療と介護、福祉を一体的に提供する地域包括ケアシステム構築を目指している。高齢社会を見据え、身近な住民同士で支え合う活動が18年、同市南西部の飯盛町で始まった。「地域共生助け合い隊」が草刈りなどの有償ボランティア(1時間500円など)を考案。住民共助のモデルとして市内外で注目を集める。
 この成功事例を手本に、小長井町で発足したのが「こながい支えあいの会」。德永会長は11月12日の発会式で「持続可能な仕組みづくりを目指し、さまざまな課題にも柔軟に対応したい。多くの人に参加してもらうことで支援の輪が広がれば」と協力を呼びかけた。
 小長井地区社会福祉協議会の中に事務局を置き、65歳以上が中心の89人が支援ボランティアに登録。ごみ出しや庭の草取り、小規模な畑の耕し、掃除、病院への送迎など日常生活の困り事をサポートする。謝金は1人当たり1時間500円。「気兼ねなく頼みやすい」雰囲気にして、早速、さまざまな予約が入っている。
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 一方、同町内で食料品を扱う店が減り、買い物の不便さを訴える高齢者が少なくない。隣接する高来町の総菜店「おごっそ」は週1回、作りたての弁当などを小長井町の民家駐車場に配達する独自サービスを今春から始めた。ひじきの煮物やアジの南蛮漬けなど懐かしい家庭の味が人気だ。
 希望者に応える形で配達を始めたが、いつの間にか和気あいあいと語り合う場に。姿を見せない人がいると、他の人が自宅まで呼びに行くことも。弁当を受け取った女性は「料理もだけど、週1回、皆とおしゃべりするのが楽しみ」と笑顔を見せる。
 店主の森あさ子さん(72)は「スタッフも高齢なのでいつまで続けられるか分からないが、役に立てるならうれしい」と話す。住み慣れた地域で暮らし続けたい-。同じ思いを抱く人たちの共感の輪が過疎の町を支えている。

「こながい支えあいの会」への参加を呼びかけるチラシ

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