2024年問題、建設業者も影響懸念 ICT導入で業務効率化、発注者の協力も訴え 青森県内

パソコン上で社員の残業時間を確認するシステムを導入したタナカホーム

 青森県内の建設業関係者が、来年4月の残業規制強化に伴う「2024年問題」を控え、業務への影響に不安を募らせている。人手不足が深刻化しているのに加えて、1人当たりがこなせる仕事量が制限されるため、予定する工期に間に合わなくなる恐れがあるためだ。業務慣習の見直しや情報通信技術(ICT)の導入による効率化が進められているが、余裕を持たせた工期の設定など「発注者の協力も必要」と関係者は訴える。

 八戸市の住宅建築会社「タナカホーム」は紙のタイムカードを使っていた勤怠管理をICカード方式に変更し、残業時間を自動集計。パソコン上の一覧表で社員の残業時間を互いに確認できるシステムも導入し、社員自身が作業効率を考えるように促した。

 21年度に月平均14.5時間だった社員1人当たりの時間外労働は23年12月1日現在で8.4時間に減少。IT推進室の髙田京子さんは「業務にまだまだ無駄があると思うので効率化を図っていく」と言う。

 三沢市の中村建設は3次元の設計データを読み込ませた重機を活用。掘削の深さや重機の位置などをモニターの画面で瞬時に確認することができるため、従来の方法に比べて、省人化や作業短縮の効果を見込む。

 24年4月以降について「従業員の年間稼働時間は減るが、給料を下げることはできない」と中村陽平社長。物流業にも残業時間の上限が適用されるため、資材が工事の日程通りに届かなくなる可能性もあり、「稼働時間の減少に物流の停滞、(資材価格上昇など)物価高の影響が重なり、結果として道路や港湾など社会全体のインフラを維持できなくなることに懸念を抱いている」と語る。

 働き方改革によって労働時間の縮小が避けられない中、発注者側による工期の見直しや特定の時期に偏りがちな施工を分散させることも急務となっている。

 県建設業協会の福士祐治専務は「残業で何とか工期に間に合わせていたが、(残業の上限規制で)そういったことができなくなるという不安がある。発注者に事情を理解してもらわないといけない」と話す。

 県整備企画課によると、県発注の公共工事では既に建設業者の週休2日や悪天候による作業の遅れを考慮した工期を設定。年度末の予算成立を受けて春先に発注すると、施工が9~11月に集中する傾向があるため、予算時期にとらわれない発注の仕組みを導入しているという。

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建設業の2024年問題 24年4月から建設業従事者の時間外労働(残業)の上限規制が強化されることで生じる問題。19年施行の働き方改革関連法に伴うが、人手不足などを背景に長時間労働が常態化している建設業は自動車運転業、医師とともに5年間、適用が猶予されていた。時間外労働は年360時間(労使合意に基づいて年720時間)などの上限が適用され、違反した企業には罰則が科せられる。交通の確保を目的に行う道路の除雪業務は基本的に上限規制の対象外となる。

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